最終更新日:2023.11.30
「赤ちゃんのうんちが出ないのはどうして?」「毎日快便だったのに、急に便秘になったみたい」。赤ちゃんの便秘に戸惑ったり、心配になったりする親は、意外なほど多いものです。
質問サイトでも、赤ちゃんの便秘に関係する相談が数多く寄せられています。
生後一ヶ月半の赤ちゃんがいます。
ちょうど一ヶ月たつ頃からウンチの回数が1日1回~2回と回数が減ってきました。(略)この時期の赤ちゃんは大体どのくらいの頻度でウンチが出るのでしょうか?この症状は便秘なんでしょうか?引用元:Yahoo知恵袋
生後7ヶ月の赤ちゃんが便秘で5日でていません。
お腹は少し出ていて、おならばかりしていますが本人はそれほど苦しそうではないです。軽く綿棒かんちょうはしましたが、綿棒の先にも付かない状態です。
病院行った方がいいでしょうか。引用元:Yahoo知恵袋
赤ちゃんは自分のお腹の調子を伝えられないため、親が排便のペースやうんちの状態をよく見てあげることが大切です。だからこそ、便秘になったり、うんちの状態が普段と異なったりした時には不安になりますよね。
今回は、赤ちゃんが便秘になる原因や家庭でできる便秘解消法、病院を受診するタイミングについてお伝えします。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
赤ちゃんは消化器官が未発達なため、排便ペースや便の硬さが不安定です。腹筋の力も弱く、便を押し出すためにいきめないことも影響しています。
また、新生児期は眠っている時間が長いため、運動不足によって便秘が引き起こされることが少なくありません。
さらには、飲んでいるのが母乳かミルクなのかも赤ちゃんの便秘に関係していると言われています。
生後1ヶ月~3ヶ月の乳児26,869名の発育や哺乳、便性などの状況を全国規模で調査したところ、生後1ヶ月では母乳を飲んでいる赤ちゃんの排便回数が多いことが明らかになりました(※1)。
その理由として、母乳は腸内環境を良くするビフィズス菌を増やす作用をもつミルクオリゴ糖を含んでいることが関係していると考えられています。母乳1ℓあたりに含まれるミルクオリゴ糖は12~13gで、乳児の未熟な腸管組織を成熟させる効果を示すような研究結果も報告されています(※2)。
だんだん消化器官が発達してくる生後2、3ヶ月になると、腸に便がたまりやすくなって便秘を引き起こす要因となります。
そして生後5、6ヶ月は、離乳食が始まるとともに水分不足に陥りやすい時期です。この頃になると便が腸内で硬くなりやすくなり、カチコチになった便を出す際に肛門が切れて痛い思いをすることもあります。
すると「排便=痛い体験」というイメージが刻まれて排便を拒否するようになり、便意を感じても我慢してしまうのです。その結果、腸内で便がさらに硬化し、排便時に肛門が切れて痛みを感じる…という悪循環に陥り、便秘がどんどん悪化します。
肛門が切れる裂肛は離乳食になる生後6カ月後半頃から増え始め、女児に多い傾向があります(※3)。
※1:菅野貴浩, and 米久保明得. "栄養法別にみた乳児の発育, 哺乳量, 便性ならびに罹病傾向に関する調査成績 (第 10 報)." 小児保健研究 64.4 (2005): 585-593.
※2:浦島匡, and 福田健二. "ミルクオリゴ糖の機能研究における最近の進歩 (4)." (2019): 254-265.
※3:松藤凡, et al. "裂こうに対する治療法の工夫 VIII. 小児の裂こう." 日本大腸肛門病学会雑誌 58.10 (2005): 853-856.
赤ちゃんの排便回数は個人差が激しく、「〇日以上うんちが出ないから便秘」という明確な日数は断言できません。
1歳未満の乳児206人を無作為に抽出して行った排便回数の追跡調査で、新生児期の排便回数は1日5回以上から数日に1回までとばらつきが大きいことが報告されています。ばらつきは成長にともなって小さくなり、1歳では1日1~3回程度の排便ペースに収束しました(※1)。
個人差があるとは言え、何日間も便が出ないと心配になりますね。辛そうな様子の赤ちゃんを見ると、可愛そうな気持ちも湧いてくるでしょう。
頑固な便秘の影に、病気が潜んでいることがないとは言い切れません。もしも便が出ないこと加えて次のような症状がある場合は、消化器官の機能異常や病気などの可能性も考えられます。すぐに病院を受診したほうが良いでしょう。
赤ちゃんの便秘で病院を受診する目安
また、慢性便秘を引き起こす原因の一つにミルクアレルギーがあります。ミルクアレルギーの発症頻度は日本では全小児で2~3%で、発症時期は新生児期が全体の32.8%です。適切な治療が行われれば1~3歳で無症状になるとされていて、寛解率は1歳で50%、2歳で70%、3歳で85%という報告もあります(※2)。
※1:松藤凡, et al. "23. 乳児期の排便回数の推移 (セッション 1: 病態, コンセンサスカンファレンス, 第 37 回日本小児消化管機能研究会)." 日本小児外科学会雑誌 43.5 (2007): 710.
※2:鬼武美幸, and 北山保博. "慢性便秘症を契機に見つかったミルクアレルギーの 1 例." 日本小児外科学会雑誌 46.7 (2010): 1115-1118.
「病院を受診するほどではないけれど、便秘が続いて心配」という場合は、家庭でできる便秘解消法を試してみるのも一つの手段です。
赤ちゃんの便秘を改善する効果が期待できる対処法を、ご紹介します。
ベビーオイルなどをつけて滑りを良くして行うのもおすすめです。
1.温めた指先を揃えて赤ちゃんのへその下に当てる
2.指先で赤ちゃんのお腹を軽く押さえながら、へその周囲を「の」の字を書くようにゆっくりマッサージする
授乳やミルクをあげる時間、寝かしつけの時間をできるだけ毎日同じ時間に行うようにすると、自律神経が整って排便ペースが安定しやすくなります。
オリゴ糖には腸内の善玉菌・ビフィズス菌を増やす作用があります。赤ちゃん用のオリゴ糖が市販されているので、お湯や離乳食に加えて与えるのがおすすめです。ただし、過剰にあげると下痢の原因になります。まずは、商品パッケージに記載されている目安量を試しましょう。
離乳食が始まると母乳やミルクを飲む量が減るため、水分が不足して便秘傾向になることがあります。うんちが硬い場合は、食後にしっかりと水分を与えましょう。
綿棒で肛門を刺激して排便を促す「綿棒浣腸」は、家庭でもできます。早ければ綿棒を引き抜いた瞬間に排便が始まることもあるので、新聞紙など汚れても良い敷き物の上で行ってください。行うタイミングは、授乳や食後30分頃が効果的です。
便が出ない場合は、おなかを優しくマッサージしてあげましょう。何度もやると肛門を傷つけてしまう可能性があるため、1日1回程度が目安です。
綿棒浣腸のやり方
今回は、赤ちゃんの便秘の原因や対処法などについてお伝えしました。
便秘が続く場合や繰り返す場合、痛みを訴える時などは小児科に相談することをおすすめします。浣腸や座薬など、赤ちゃんに応じた処置をしてもらえるでしょう。
言葉を話せない赤ちゃんの体の調子を教えてくれるのが、うんちです。赤ちゃんの便通状態を観察して、うんちを出すのに苦労している様子があれば、綿棒浣腸など家庭でできる排便ケアを試してみてくださいね。
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