最終更新日:2024.1.19
女性に多い、便秘の悩み。なぜ、女性は便秘になりやすいのでしょうか?
今回は、管理栄養士としての知識を織り交ぜながら、女性に便秘が多い原因や対処法などについて詳しく解説します。
便秘は「ありふれた症状」と軽く見られがちですが、放置しておくと重篤な事態につながることも少なくありません。おなかがスッキリしない日が続いている女性の皆さんは、今後の人生のためにもぜひ最後までお読みくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
そもそも、便日とは何日以上便通がない場合を指すのでしょうか?
これまでは「週の排便回数が3回以下の場合」と定義されることが一般的でした。しかし、便秘患者の多くが週に3回以上便通があっても排便時にいきみが必要だったり、便が硬かったり、便を出してもスッキリしないといった症状を訴えることが多いため、排便回数だけで便秘を定義するのは難しいと考えられるようになっています。
ちなみに、2000年に米国消化器学会で決定された便秘の診断基準は以下の内容です(※)。
便秘の定義
※過去12ヶ月以内に12週間以上(必ずしも連続でなくてもいい)上記の2項目以上を満たすこと
※ただし、軟便ではないこと
また、ひと口に「便秘」と言っても引き起こされる原因によって特徴が異なり、対処法にも違いがあります。
便秘の多くは生活習慣や食生活の乱れなどが関係する「機能性便秘」であり、中でも女性に多いのが「結腸性(弛緩性)便秘」です。
便秘の分類 | 特徴 | ||
---|---|---|---|
器質性便秘 | 腸管自体に問題がある場合に起こる便秘 | ||
機能性便秘 | ①一過性単純性便秘 | 一過性の便秘で病気との関係は少ない | |
②常習便秘 | a.結腸性(弛緩性)便秘 | 腸管の緊張や運動の低下が原因で起こる便秘。ぜん動運動が鈍いため大腸内に便がとどまり、便の水分が吸収されて硬くなって排出困難になる。女性の便秘の大半を占める | |
b.直腸性便秘 | 便意を我慢する習慣がある人に多い。便が直腸内に送られても便意を感じないため排便できない | ||
c.痙攣性便秘 | 腸管の拡張や運動の亢進によって起こる便秘。腹部の左下に痛みがある。ストレスが引き金となって引き起こされることもあり、若い世代に多い | ||
③症候性便秘 | 神経疾患や心疾患など他に原因となる疾患がある場合に生じる便秘。妊娠による便秘も含む | ||
④薬物性便秘 | 腸管の動きを抑制する作用がある薬剤を服用したことで起こる便秘 |
※:徳井教孝,and三成由美."便秘の定義と便秘体質."中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要5(2012):49-54.
「女性の方が便秘になりやすい」というイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか?
事実、ある病院で便通異常を訴えた外来患者1,187例中、便秘を訴えた患者は全世代を通して女性が多く、特に21歳~30歳では女性の患者数が男性の5倍近くもいました。平均でも便秘患者全体の75%を占め、女性の便秘率が圧倒的に高いことが分かる結果となっています(※1)。
では、なぜ女性は便秘になりやすいのでしょうか?
便秘が引き起こされる原因は複数ありますが、女性特有の要因として挙げられるのが女性ホルモンです。
月経周期後半、つまり生理前に卵巣から分泌される女性ホルモンの「プロゲステロン(黄体ホルモン)」には、腸管のぜん動を抑制する作用があります。そのため、生理前は便秘になりやすくなるのです。生理が始まり、プロゲステロンの分泌が止まれば便秘は解消されます(※2)。
また、女性は男性よりも腸が長い傾向があるため便秘になりやすいとされています。
ある研究で横行結腸の長さを男女で比較したところ、男性は平均170.7cm、女性は平均179.4cmで女性の方が長いことが明らかになりました(※1)。
女性の方が男性よりも体格の小さな人が多いのにもかかわらず腸が長いため、腸を体内におさめるためには腸の折れ曲がりが多くなります。折れ曲がった部分が多いと便が通過しにくくなるため、女性の方が便秘になりやすいのです。
別の調査では、大腸の長さが長いほど、あるいは大腸全体の表面積が大きいほど排便回数は少なく、下剤の使用頻度が高い傾向が認められています(※2)。
ほかに偏った食生活や生活習慣の乱れも、便秘になる大きな原因です。
ダイエットで食事の量を減らすと、当然のように便の量も減少します。便の量が少ないと排出されにくくなり、便秘になります。また、糖質の摂取を控える糖質オフダイエットでは炭水化物を避けがちですが、炭水化物には食物繊維が多く含まれているため、便秘を引き起こす要因に。
便をスムーズに押し出すための腹筋力がないと、腹圧がかけられず便を排出できません。女性は筋力がない人も多く、排便時の力が足りないために便秘となっている場合が少なくありません。
ストレスがたまると自律神経が乱れて腸の動きが悪くなったり、腸内環境を悪くする悪玉菌が増加したりして、便秘が悪化します。
東京圏在住の成人女性(20歳~45歳)約1,000人を対象に便通状態と睡眠健康の関係を調査したところ、便通状態が悪い群は就寝・起床時間が不規則であることが明らかになりました。
睡眠健康危険度の総得点は、機能性便秘(FC)群で高くなる傾向があり、平日の午後の眠気と全日の眠気が有意に増加。睡眠状態(睡眠の質)と便通状態は互いに影響し合っていることが示唆されました(※5)。
腸が働くのは、副交感神経が優位に働く睡眠中です。そのため、寝不足が続くと便秘になると考えられます。
※1,2:平塚秀雄."女性のこう門部疾患女性と便秘."日本大腸肛門病学会雑誌43.6(1990):1070-1076.
※3:山崎震一,et al."日本人大腸の長さと内径に関するX線学的検討."日本大腸肛門病学会雑誌47.1(1994):31-39.
※4:貞広荘太郎,et al."排便習慣に影響する因子の検討年齢・性・大腸の形態との関連性."日本大腸肛門病学会雑誌46.2(1993):111-115.
※5:小野茂之,et al."東京圏の成人女性を対象とした便通状態と睡眠健康に関する疫学的調査."女性心身医学10.2(2005):67-75.
便秘の悩みは、なかなか人には相談しにくいものです。便秘が続いたり、排便時に痛みを感じたりしても「わざわざ病院へ行くほどのことではない」と、放置していませんか?
便秘が続くと、大腸内で発酵や腐敗がすすんで腸内に悪玉菌が増加し、腸内環境が悪化。ますます便秘傾向が強くなり、慢性化します。便秘が慢性化すると便が硬くなり、排出困難な状態に。すると便を出す時に痛みが生じたり、肛門が切れて痔になったり、直腸の一部が肛門から出る直脱腸になります。
また、排出されず腸内にとどまって発酵・腐敗した物質からは、悪臭成分が発せられます。その悪臭成分は腸壁から血液に溶け込み、やがて口臭や体臭として体外に排出されるのです。
さらに、便秘は睡眠にも悪影響を及ぼして眠りの質を低下させます。
りが浅くなると成長ホルモンが十分に分泌されなくなり、本来は睡眠中に行われるはずの細胞の修復や再生などができません。腸内環境の悪化によって増殖した悪玉菌の作用と相まって、ニキビや吹き出物、シミやシワなど様々な肌トラブルが起こってしまうのです。
便秘改善のために、市販の便秘薬を服用してその場しのぎの対策をしていませんか。しかし、それでは根本的な便秘対策にはなりません。便秘を解消して腸内環境を良い状態にするためには、腸に効果的な生活習慣の実践や食生活を送ることが大切です。
次は、すぐに実践できる腸内環境を整えるための生活習慣や食生活をご紹介しますので、ぜひ毎日の暮らしにとり入れてみてくださいね。
毎朝同じ時間に起きて朝食を摂り、トイレタイムを設けるといった流れを作ることで、体内時計が整って排便しやすくなります。たとえ便意がなくても、同じ時間にトイレに行くことを繰り返すうちに便意を感じられるようになるでしょう。
食事はできるだけ、低脂肪で食物繊維が豊富な食べ物を意識して摂りましょう。糖質オフダイエットで炭水化物の摂取を控えている人は、食物繊維を補うことが大事です。
また、甘い食べ物や飲み物が好きで砂糖の摂取量が多い人は、腸内環境を良くするためにも少しだけ我慢を。白砂糖を摂りすぎると体温が低下し、腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が優勢になりやすくなります(※1)。
ウォーキングやストレッチなど軽めの運動は、ストレス解消だけでなく腸の動きを良くする効果が期待できます。また、副交感神経を優位にしてストレスを緩和させる作用が報告されている物質「GABA(ギャバ)」を含む食べ物やサプリメントを摂取するのもおすすめです。
便意を我慢することが多い人は、便が直腸内に送られても便意を感じにくくなる「直腸性便秘」になりやすくなります。排便のサインを感じたら、すぐにトイレへ行くようにしましょう。
緑茶などに含まれる茶カテキンには、悪玉菌を減少させて腸内環境を整える効果があることが報告されています(※2)。ある研究でカテキン含有茶飲料を14日間摂取した後に便中のアンモニア濃度を調べたところ、摂取14日間で優位に減少。カテキン含有茶飲料の摂取によって、腸内環境が改善されることが示唆されました(※3)。
※1:東川尅美, and 下坂智恵. "日常生活と薬膳に関する研究 (第 2 報): 食材と体質改善." 北星学園女子短期大学紀要 35 (1999): 181-192.
※2:原征彦. "茶カテキン類の機能性とそれらの応用例." 日本食品保蔵科学会誌 26.1 (2000): 47-54.
※3:前川紫, et al. "カテキン含有茶飲料の血中ビタミン, ミネラルおよび腸内細菌叢に及ぼす影響." 微量栄養素研究 22 (2005): 93-99.
今回は、女性に多い悩みである「便秘」についてお伝えしました。
便秘の原因には女性特有の理由によるものや生活習慣、食生活が大きく影響しています。便秘を改善するためには、腸内の悪玉菌を退治して善玉菌を増やし、腸内環境を良くすることが不可欠。そのためにも、腸内環境の改善作用が期待できる食べ物を意識的に摂取することや、腸に良い生活習慣を実践することが重要なのです。
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