最終更新日:2024.1.26
便秘で悩むのは、大人だけではありません。成長期であり、思春期の多感な時期でもある中学生は、便秘の症状が増える世代だと言われています。
中学生が便秘になる原因には、大人の便秘とは違う要素が絡んでいる場合も少なくありません。
今回は、中学生が便秘になる原因や便秘の解消法について、管理栄養士としての知識を織り交ぜながら詳しくお伝えします。
便秘で悩んでいる中学生の皆さんや、お子さんのおなかの調子が気になる保護者の方は、参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
中学生の便秘の実態について分かる調査結果があります。
長野県内の中学生377名(女子189名、男子188名)に対して、普段の排便状況をアンケート調査したところ、「毎日規則正しく出る」と回答した男子は29.8%、女子は23.8%でした。一方、「何日も出ないことがある」と答えた男子は3.2%、女子は5.8%に上りました(※1)。
林千代, 千裕美,and松下慶子."小・中学生の朝食摂取状況と基本的生活状態との関連."飯田女子短期大学紀要25(2008):97-114.を基に作成
大阪市内に住む25歳~54歳の成人2,416人(男性1,316名、女性1,100名)に排便習慣について行ったアンケート調査では、「毎日排便がある」男性は71%、女性は44%でした(※2)。この結果から、中学生の方が成人よりも便秘傾向にある人が多いことが予想できます。
なぜ、中学生は便秘になりやすいのでしょうか?そこには3つの要因があります。
思春期に発症しやすい代表的な心身症に、「過敏性腸症候群(IBS)」があります。過敏性腸症候群は、便秘や下痢などの便通異常、おなかのハリによる不快感といった症状が表れる疾患で、発症要因として精神的ストレスの増加が挙げられています。
福岡市内の小学校1年生から高等学校3年生までの32,280名を対象に行った調査によると、便通異常の初発年齢は中学3年生から高校生にかけてからが最も多く、40%でした。
次に多かったのが小学6年生から中学1年生にかけてで、26%にのぼりました(※3)。
この時期は試験と入学による生活環境の変化が多く、ストレスがたまりやすい時期と一致しています。このことからも、試験と関連した不安・緊張が便秘を増悪させる因子の一つであると考えられるでしょう。
空腹状態で食べ物が胃に入ると、腸を刺激して排便を促す「胃結腸反射」という反応が起きますが、朝ごはんを食べないとこの働きが発生せず便秘の原因となります。
中学生になると朝の補習や部活の朝練などのために、小学校の頃よりも早く登校する日が増えたという人も多いのでは?そのために朝の時間に余裕がなく、朝食を食べない人も少なくないでしょう。
長野県内の中学2年生16,191人を対象に、朝食の喫食状況をアンケート調査した結果、86.9%が「毎日食べる」と回答。一方、「食べない日がある」と答えたのは12.8%でした。
そのうち、「週に3日~5日以上食べない日がある」人は2.8%、「週に6日以上食べない人」は1.3%で、少数ながらも朝ごはんをまったく食べない中学生がいることが明らかになっています。
朝食を食べない理由は「時間がない」が最も多く、48.3%、次いで「おなかがすいてなかった」が45.3%でした(※4)。
中学校に入学すると、小学生の頃とは違う生活パターンを送ることになります。入学してしばらくの間は身体が慣れず、体内時計が乱れて自律神経がバランスを崩すこともあるでしょう。自律神経が乱れると、睡眠中に腸を動かして消化を促進する副交感神経が働かず、腸の動きが鈍くなって便秘を引き起こします。
もちろん、便秘になる原因にはさまざまな要因が絡み合っているため、この3つだけが理由ではありません。しかし、中学生ならではの便秘の原因を知り、取り除くことが便秘解消への近道になるでしょう。
※1:林千代,千裕美, and 松下慶子."小・中学生の朝食摂取状況と基本的生活状態との関連."飯田女子短期大学紀要25(2008):97-114.
※2:武副札子, et al. "成人男女の健康と食行動への認識." 日本食生活学会誌 9.3 (1998): 48-55.
※4:令和元年度児童生徒の食に関する実態調査の結果について(長野県教育委員会 長野県学校保健会栄養教諭・学校栄養職員部会により実施/長野県保健福祉課)
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便秘を解消するためには、生活習慣や食生活を改善することが近道です。明日からでもすぐに実践できる、中学生の便秘改善方法を紹介します。
中学生になると、塾や部活などで帰宅が遅くなることも増えるでしょう。その分、生活リズムが後ろにずれて入浴や就寝時間が遅くなり、睡眠時間が足りなくなることも…。
育ち盛りの中学生にとって、睡眠時間は成長ホルモンを分泌するために重要な時間です。また、睡眠不足の状態では自律神経がバランスを崩して腸の動きが悪くなり、便秘しやすくなります。便秘解消のためには、夜更かししないように心掛けることが大切です。
朝食を食べると、腸が刺激されて排便が促されます。
北海道旭川市などの中学1~3年生1,236名を対象に行った調査で、朝食の摂取状況についてアンケートを行ったところ、「毎日食べる」が68.0%(840名)、「ほぼ毎日食べる」が16.8%(208名)、「時々食べる」が9.6%で、「食べない」と回答したのは4.4%(55名)でした。
そのうち、朝食を「毎日食べる」人で「1日1回以上」排便をする人は70.2%(590名)、「食べないことがある」人では59.2%(226名)という結果が明らかになりました(※1)。
便秘解消のためには、朝ご飯をきちんと食べることが重要だということが分かります。
芝木美沙子,et al."中学生の疲労自覚症状と生活行動に関する研究."北海道教育大学紀要.教育科学編54.2(2004):129-144.を基に作成
便秘解消のためには、食生活を見直すことも大事です。
ある調査では、便秘気味の生徒は、揚げ物やスナック菓子、インスタント食品、ファストフード、ジュースの摂取量が多い傾向にあることが報告されています(※2)。
逆に、便秘ではない生徒が多く摂取していたのは「ご飯」「魚」「大豆・大豆製品」「チーズ・ヨーグルト」「野菜」「味噌汁」などでした(※3)。
便秘予防のためには、和食中心の食生活が効果的だと言えそうです。
便をスムーズに排出するためには、腹筋や腸腰筋にある程度の筋力が必要です。また、適度な運動は自律神経を整えて、睡眠中に腸の蠕動運動を促進して便秘を予防します。
ここで、運動が便秘改善に効果があることが分かる実験結果をご紹介しましょう。
便秘教室に参加した81人(20代~80代)を対象に、便秘教室で行った運動療法(歩行運動・体操)についてアンケート調査を行った結果、歩行運動は約87%、体操については約89%の人が便秘に対して効果的であると回答。
歩行や体操などの運動が便秘に対して有効な手段の一つであることが明らかになりました(※4)。
便意を我慢することが多いと、直腸の神経が鈍くなる「直腸性便秘」を引き起こす可能性が高くなります。直腸性便秘になると、便が直腸まで進んでも便意が起こらず、腸内で便が硬くなって便秘が悪化。硬い便を排出しようとしても出来ず、さらに便が硬くなるいう悪循環に陥ります。
直腸性便秘にならないためには、便意を覚えたら我慢せずにトイレへ行くことが一番です。とは言え、学校での排便には抵抗感がある中学生も多いでしょう。
中学生に対して行ったアンケートでは「学校で排便しない」と答えた人が75.3%にも上りました。また、「学校のトイレを使用したくないため我慢する」という人は、なんと47.7%(※5)。学校で便意を感じても、約半数が我慢しているという衝撃の事実が判明しました。
学校で排便することに対して、抵抗感や羞恥心があるのは仕方がないことです。しかし、健康のためには便意を感じたらトイレに行くようにしましょう。
※1:芝木美沙子,et al."中学生の疲労自覚症状と生活行動に関する研究."北海道教育大学紀要.教育科学編54.2(2004):129-144.
※2,3:新沼正子,and田村理恵. "中学生・高校生の生活状況と健康教育・健康管理上の問題点―日本語版便秘評価尺度を使用して―."中国学園紀要11(2012):141-148.
※5:芝木美沙子,et al."中学生の疲労自覚症状と生活行動に関する研究."北海道教育大学紀要.教育科学編54.2(2004):129-144.
成長期の中学生は、ホルモンバランスや生活リズムなどが乱れがちなだけでなく、思春期ならではの繊細さでストレスを抱えがちです。中学生の便秘は、それらの要因が重なることで引き起こされる場合が少なくありません。
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど大切な器官であり、脳の発達やこころの健康に深く関わっています。腸内環境を整えて便秘を解消することで、勉強に集中できたり、成績が向上したり、ニキビなどの肌荒れが改善する可能性も高くなるのです。
「たかが便秘」と軽く考えず、便秘改善に効果的な生活習慣の実践や、便通を良くする食べ物の摂取を心掛けて、毎日おなかをスッキリさせましょう!
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