最終更新日:2024.8.23
便秘で悩むのは、大人だけではありません。成長期であり、思春期の多感な時期でもある中学生は、便秘の症状が増える世代だと言われています。
中学生が便秘になる原因には、大人の便秘とは違う要素が絡んでいる場合も少なくありません。
今回は、中学生が便秘になる原因や便秘の解消法について、管理栄養士としての知識を織り交ぜながら詳しくお伝えします。
便秘で悩んでいる中学生の皆さんや、お子さんのおなかの調子が気になる保護者の方は、参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
中学生の便秘の実態について分かる調査結果があります。
長野県内の中学生377名(女子189名、男子188名)に対して、普段の排便状況をアンケート調査したところ、「毎日規則正しく出る」と回答した男子は29.8%、女子は23.8%でした。一方、「何日も出ないことがある」と答えた男子は3.2%、女子は5.8%に上りました(※1)。
林千代, 千裕美,and松下慶子."小・中学生の朝食摂取状況と基本的生活状態との関連."飯田女子短期大学紀要25(2008):97-114.を基に作成
大阪市内に住む25歳~54歳の成人2,416人(男性1,316名、女性1,100名)に排便習慣について行ったアンケート調査では、「毎日排便がある」男性は71%、女性は44%でした(※2)。この結果から、中学生の方が成人よりも便秘傾向にある人が多いことが予想できます。
ではなぜ、中学生は便秘になりやすいのでしょうか?
次は、中学生が便秘になりやすい原因について探ってみましょう。
中学生になると、生活リズムや人間関係などが小学生の時とは大きく変化します。
そのため、心身の調子を崩してしまうことも少なくないでしょう。
中学生が便秘を起こしやすくなる主な要因が、以下の3つです。
便秘や下痢といった便通異常や腹部の不快感などの症状があらわれる「過敏性腸症候群(IBS)」は、思春期に発症しやすい心身症の代表格です。
過敏性腸症候群の主な発症原因は、精神的ストレスの増加と考えられています。
中学校に入学してしばらくの間は身体や心が環境の変化に慣れず、自律神経がバランスを崩すことも少なくないでしょう。
自律神経が乱れると、睡眠中に腸を動かして消化を促進するはずの副交感神経が働かず、腸の動きが鈍くなって便秘を引き起こします。
中学生になると、朝の補習や部活の朝練など、小学校の頃よりも早起きして登校しなければならない日が多くなります。
その一方、中学校に入ると就寝時間が遅くなりがちです。
そのため、朝ギリギリまで寝て朝食を食べずに学校へ行くという人も増えるでしょう。
また、スタイルを気にしてダイエットのために朝食を抜く、という人がいるかもしれません。
しかし、朝食を抜くと腸が動きにくくなり、便秘しやすくなります。
中学生の便秘解消法は、基本的には大人と変わりません。
生活習慣や食生活を見直して腸内環境を整えることが、便秘解消への近道です。
明日からでもすぐに実践できる、中学生の便秘改善方法を紹介します。
育ち盛りの中学生にとって、睡眠時間は成長ホルモンを分泌するために重要な時間です。
また、睡眠不足の状態では自律神経がバランスを崩して腸の動きが悪くなり、便秘しやすくなります。便秘解消のためには、夜更かしを避けて十分な睡眠時間をとることが大切です。
朝食を食べると、腸が刺激されて排便が促されます。
また、食べ物の味や香り、歯応え、舌触りなどによって五感が刺激されることで体が目覚め、一日の活動に対して準備が整います。
食生活を見直すことも、便秘解消には欠かせないポイントです。
ある調査では、便秘気味の生徒は、揚げ物やスナック菓子、インスタント食品、ファストフード、ジュースの摂取量が多い傾向にあることが報告されています(※1)。
逆に、便秘ではない生徒が多く摂取していたのは「ご飯」「魚」「大豆・大豆製品」「チーズ・ヨーグルト」「野菜」「味噌汁」などでした(※2)。
便秘予防のためには、和食中心の食生活が効果的だと言えそうです。
便をスムーズに排出するためには、腹筋や腸腰筋にある程度の筋力が必要です。
また、適度な運動は自律神経を整えて、睡眠中に腸の蠕動運動を促進して便秘を予防します。
便意を我慢することが多いと、直腸の神経が鈍くなる「直腸性便秘」を引き起こしやすくなります。
直腸性便秘になると、便が直腸まで進んでも便意が起こらず、腸内で便が硬くなって便秘が悪化。
硬い便を排出しようとしても出来ず、さらに便が硬くなるという悪循環に陥ります。
※1,2:新沼正子,and田村理恵. "中学生・高校生の生活状況と健康教育・健康管理上の問題点―日本語版便秘評価尺度を使用して―."中国学園紀要11(2012):141-148.
成長期の中学生は、ホルモンバランスや生活リズムなどが乱れがちなだけでなく、思春期ならではの繊細さでストレスを抱えがちです。
中学生の便秘は、それらの要因が重なることで引き起こされる場合が少なくありません。
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど大切な器官であり、脳の発達やこころの健康に深く関わっています。
腸内環境を整えて便秘を解消することで、勉強に集中できたり、成績が向上したり、ニキビなどの肌荒れが改善する可能性も高くなるのです。
「たかが便秘」と軽く考えず、便秘改善に効果的な生活習慣の実践や、便通を良くする食べ物の摂取を心掛けて、毎日おなかをスッキリさせましょう!
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