最終更新日:2024.1.29
便秘が続いて、ニキビや吹き出物といった肌荒れに悩まされた経験はありませんか?おなかがスッキリしなくて不快なだけでなく、肌まで荒れると憂うつになりますよね。
今回は食品保健指導士・管理栄養士管理栄養士としての立場から、便秘でニキビや吹き出物ができる理由や、便秘による肌荒れ予防のための生活習慣などをお伝えします。
便秘で肌が荒れることが多い人は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
そもそも、便秘とはどのような状態なのでしょうか?
便秘とは、排便回数や排便量が少ないために便が大腸内に滞った状態、または直腸内にある便を快適に排出できない状態のことで、症状名や疾患名ではありません(※1)。
医療機関における便秘症の診断基準としては、国際消化器学会の提唱により定められた診断基準である「ローマ基準」が国際的に用いられています。
慢性便秘症のローマ診断基準IV
※ただし、下剤を使わないときに軟便になることは稀
上記の中で2項目以上に該当し、「6カ月以上前から症状があり、最近3カ月間は上記の基準を満たしていること」、また「過敏性腸症候群(IBS)の基準を満たさないこと」が便秘症と診断される基準です(※2)。
便秘症は、一般的に男性よりも女性の方に多いとされています。
その理由は、女性ホルモンの1つ「プロゲステロン(黄体ホルモン)」には、腸のぜん動活動を鈍くする作用があるからです。そのため、プロゲステロンが増える排卵後から生理前までは便秘がちに。この期間は、ニキビや吹き出物といった肌荒れが起こりやすくなります。
※1:味村俊樹, 本間祐子, and 堀江久永. "I. 慢性便秘症の診断と治療." 日本大腸肛門病学会雑誌 72.10 (2019): 583-599.
※2:中島淳, 冬木晶子, and 大久保秀則. "便秘症の診断と治療―最新の進歩." 日本内科学会雑誌 106.11 (2017): 2453-2460.
女性を対象にした便秘(1週間当たりの排便日数)と肌荒れ(皮疹、紅斑、落屑の程度を指標)との因果関係に関する調査で、1週間に4日以下しか排便がない群では、毎日排便が有る群に比べて有意にできものが増加したことが明らかになっています(※1)。
なぜ、便秘が続くとニキビができたり、吹き出物が出てきたりといった肌荒れが起こるのでしょうか?
便秘により腸内環境が悪化することによって腸内細菌の産生する腐敗産物などの腸内有害物質が増加し、皮膚機能を悪化させると推察されています(※1)。
有害物質は腸壁から吸収され血液を巡り皮膚へも到達します。その中の「フェノール」は表皮細胞の正常な分化に変調をきたすことで、皮膚のくすみや乾燥といった肌トラブルを引き起こすとされています(※2)。
便通と睡眠には深い関わりがあり、便秘傾向にある人は不眠気味であることが多く、特に睡眠前半の眠りが浅いことが分かっています。
肌や身体を健康的な状態に保つために欠かせない成長ホルモンはおもに睡眠前半で多く分泌されますが、便秘の人は睡眠の質が低下しているために成長ホルモンが十分に分泌されません(※3)。そのため、ニキビや吹き出物などができやすくなるのです。
※1:伊澤佳久平, et al. "LB81 乳酸菌を使用したヨーグルトの皮膚機能改善効果に関する検証." 腸内細菌学雑誌 22.1 (2008): 1-5.
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ニキビ・吹き出物はストレスやホルモンバランスの乱れ、皮脂の分泌過剰などさまざまな原因によって発生します。
原因により発生しやすい場所は異なり、便秘・消化器の不調の場合は口周りを中心に鼻・頬・顎に発生することが多いとされています。
便秘の悩みは、なかなか人には相談しにくいものです。自分が便秘かどうか分からない人は、下の便秘評価表でチェックしてみましょう。
合計点が5点以上の人は便秘傾向にあり、点数が高くなるほど便秘傾向が強くなります。
日本語版便秘評価尺度(CAS) | ||
---|---|---|
質問 | 選択肢 | |
1 | おなかがはった感じ、膨れた感じ |
0.ない 1.ときどきある 2.いつもある |
2 | 排ガス量 |
0.普通または多い 1.ときどき少ない 2.いつも少ない |
3 | 便の回数 |
0.普通または多い 1.少ない 2.とても少ない |
4 | 直腸に内容が充満している感じ |
0.全然ない 1.ときどきある 2.いつもある |
5 | 排便時の肛門の痛み |
0.全然ない 1.ときどきある 2.いつもある |
6 | 便の量 |
0.普通または多い 1.少ない 2.とても少ない |
7 | 便の排泄状態 |
0.楽にでる 1.ときどき出にくい 2.いつも出にくい |
8 | 下痢または水様便 |
0.ない 1.ときどきある 2.いつもある |
深井喜代子,松田明子,田中美穂:日本語版便秘評価尺度の検討,看護研究28(3), 201-208,1995
便秘度チェックで便秘傾向にある人は、腸内環境を整えるのに効果的な生活習慣を実践しませんか。便秘による肌荒れ予防はもちろん、睡眠の質を高めて美肌効果も期待できる方法を紹介します。
便の排出に関わる消化管運動は、起床時に亢進し、寝ている時は低下します。そのため、規則正しい生活を送って体内時計を整えることが、便秘予防につながるでしょう。
食事をすることで便の排出が促進される胃・結腸反射が起きます。しかし、食事前の空腹時間が長くなる朝食を食べないと、排便が抑制されてしまいます。
食物繊維が豊富に含まれる食べ物を摂るようにしましょう。海藻類、納豆などに含まれる水溶性食物繊維と、サツマイモやごぼうなどに含まれる不溶性食物繊維を1:2のバランスで摂るのがポイントです。
そして便秘に効果的な成分といえばビフィズス菌。実はビフィズス菌は肌にも効果があるとされています。
女性を対象にした研究で、ビフィズス菌とガラクトオリゴ糖を4週間毎日摂取したところ、角質層の水分量や排便回数、便量が増加し、肌の透明感に関しても有意差が観察されたという結果があります(※)。
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便を出しやすくするためには、適度な水分量が必要です。体格によって量は異なりますが、1日約1.5ℓが目安です。
ダイエットのために脂質をカットしている人も多いのでは?しかし、口から摂取した脂質は体内で分解されて脂肪酸となり、腸管を刺激します。オリーブオイルなどの良質な脂を適量摂るように心掛けて。
排便を促進する消化管運動は、適度な運動をすることで刺激され、安定化します。ウォーキングやヨガ、ストレッチなどは気持ちをリラックスさせる効果もあるので、おすすめです。
ストレスの蓄積は、消化管運動に異常を引き起こす大きな要因です。ストレスを解消することで、便秘が改善されて腸内環境が整っていくでしょう。
今回は、便秘と肌荒れの関係について解説しました。
腸と皮膚、脳にはそれぞれが互いに影響を及ぼす「脳腸皮膚相関」という関係があり、ニキビと腸内フローラだけでなく、肌質や皮膚老化も関係していると推察されています(※)。
つまり、美肌を手に入れるためには便秘を解消して腸内環境を整えることが大切なのです。
腸内細菌に善玉菌を増やして腸内フローラを整えることは、美肌のためだけでなく免疫力の向上やアンチエイジング、うつ病予防にも役立ちます。
腸内環境を改善する生活習慣を、早速とり入れてみませんか。
※:山田秀和. "見た目とアンチエイジングの考え方—美から健康—." 日本香粧品学会誌 44.2 (2020): 99-104.