最終更新日:2025.09.05
便秘で太るのは本当?体重が増えた原因とダイエット中の解消法

便秘が続いて「太った」「下腹ぽっこりが気になる」と感じた経験はありませんか?
便秘は単なる排便トラブルではなく、体重や見た目にも影響を与える要因の一つです。
本記事では、便秘で太る理由や、ダイエット中の便秘リスク、そして今日から簡単に始められる具体的な改善法まで、分かりやすくまとめて解説します。

この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会 食品保健指導士
・管理栄養士
目次
便秘で太るのはなぜ?便秘で体重が増える原因
便秘は単なる排便の問題ではありません。便秘の原因となる腸内環境の乱れは、体重増加やむくみ、肌の不調などを引き起こし、生活の質を低下させる可能性も…。
まずは、便秘のせいで体重が増えるメカニズムについて解説します。
1. 腸内に便が滞留して体重が増加
健康な成人の便は、1日あたり約150〜200gとされています。
つまり、3日排便がない場合は、約450〜600gもの便が体内に滞留している可能性があるのです。

便には、体にとって不必要な脂肪分や糖分が含まれています。そのため、便秘になると過剰な脂肪分や糖分がそのまま便とともに腸内に滞留する事態に。
腸内に溜まった便に含まれた脂肪分や糖分は、腸管によって吸収され続け、皮下脂肪として蓄えられてしまう可能性があります。
2. 腸内環境の悪化による代謝低下
便秘が続くと腸内に滞留した便が腐敗して有害物質や有毒ガスが発生し、腸内に悪玉菌が増加します。
すると、腸内細菌のバランスが崩れ、脂肪の蓄積を防ぐ作用がある短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)を生成する菌種が減少。
結果として、エネルギーの吸収効率に変化が起こり、太りやすくなると考えられます。

また、腸内の滞留便に含まれる有害物の影響で血液がドロドロの状態となり、血行不良に。血行が悪くなると細胞や臓器の働きが鈍くなり、基礎代謝の低下を招いて脂肪が蓄積しやすい身体になります。
3. むくみや腹部の張り
便秘が続くと、腸内に滞留した内容物(便)から有毒ガスが発生。腸内にたまった便やガスによって下腹部が内側から押し出されるため、下腹だけが不自然に出っ張ります。
特に食後や夕方になるとお腹が張りやすく、「お腹だけ太ったように見える」のが特徴です。
これがいわゆる「ぽっこりお腹」状態で、ウエストサイズが1〜2サイズ上がることも珍しくありません。
また、水分代謝が乱れて全身にむくみが生じ、体重増加の一因に。便・水分・ガスが合わさり、1kg以上体重が増えるケースもあります。

以上のように、便秘による体重増加は「排便がないから重い」という単純な理由ではなく、腸内環境の乱れや代謝の低下、水分代謝の不調など、複数の要因が重なって起こります。
特に女性はホルモンや自律神経の影響で腸の働きが乱れやすいため、ぽっこりお腹やむくみが体型に大きく影響することも。
見た目や体重の変化を防ぐためには、便秘を早めに整え、腸内環境を健やかに保つことが重要です。
ダイエットで便秘になる理由と対策|誤ったダイエット法で便秘が悪化!?
ダイエットをしている時に、便秘が悪化してしまった経験はありませんか?
食事量を減らしたり、特定の食品を避けたりするダイエットを行うと、便秘になることがあります。
この章では、ダイエット中に便秘しやすくなる理由について詳しく解説します。
1. 炭水化物を控える「糖質制限ダイエット」による食物繊維不足
米やパン、麺類といった糖質が多い炭水化物などの摂取を控える「糖質制限ダイエット(糖質オフダイエット)」は、比較的短い期間で体重が減少しやすく、効率的に痩せられると人気のダイエット方法です。
しかし、炭水化物には食物繊維が含まれているため、糖質制限ダイエットで炭水化物を避けると食物繊維が不足し、便秘を招きます。

2. 水分不足
食事量を減らすと、食べ物に含まれる水分も摂取量も同時に減少するため、身体が乾燥状態に。
体内の水分量が減ると便が硬くなり、排便が困難な状態になります。
3. 脂肪分の極端な制限
ダイエット=脂肪分(油)を避ける、という人も多いでしょう。
しかし、油(脂質)は便が腸内を移動するときの潤滑油として作用するため、極端に脂質を制限すると便の移動が滞り、便秘が悪化する原因となります。
4. 食事回数を減らす
ダイエット中は、朝食を食べるのをやめて1日2食で過ごすという人もいます。
しかし、朝食を抜くと、食事をしない時間が長くなり、体が一種の飢餓状態に陥ります。
飢餓状態に陥った体は生命の危険を感じて、次の食事である昼食に含まれた糖質や脂質を、脂肪として体に蓄積。太る原因となります。
また、朝食を抜くと血糖値が低い状態が続きます。低血糖のままで昼食を摂取すると、食べ物に含まれる糖質によって血糖値が急上昇。上がった血糖値を下げるために、インスリンが過剰分泌されます。
インスリンには血液中の糖分を脂肪として蓄積する作用があるため、大量に分泌されることで太りやすくなります。
便秘の効果的な解消法|生活習慣や食生活の改善で腸内環境を整えよう
便秘を即効で解消する方法に、便秘薬があります。しかし、便秘薬はあくまで「出ない便を出す」ための対処療法。大切なのは、そもそも「便が滞留しない」ようにすることです。
次は、腸の働きを良くして便通を整える効果的な生活習慣や、食事の内容などを紹介します。これらの方法を組み合わせて、根本からの便秘解消を目指しましょう。
1. 食物繊維のバランス摂取で腸の動きをサポート
食物繊維には便を柔らかくする水溶性と、腸の蠕動運動を促進する不溶性があります。
この2種類の食物繊維をバランスよく摂ることで、腸内での便の通過がスムーズになり、便秘の予防・解消につながります。
厚生労働省は、食物繊維を1日あたり女性は18g以上、男性は21g以上の摂取するよう推奨しています。

特に、ダイエット中は食物繊維が豊富な玄米や雑穀米、全粒粉といった未精製の穀物を摂るようにしましょう。
2. 良質な脂質(油)を摂る
固くなった便をするっと出すためには、適度な脂質が必要です。便通効果だけでなく、美容効果も期待できるのが以下の5種類のオイルです。

健康と美容に役立つオイルの種類と特徴
① MCTオイル(中鎖脂肪酸油)
【特徴】
脂肪として体内ですぐエネルギーになりやすく、体脂肪として蓄積されにくい。人によっては便秘が悪化する場合も。
【美容効果】
・代謝アップによる体型維持サポート
・腸内環境の改善
・皮膚の乾燥予防に
【ポイント】
抗酸化作用は弱めではあるものの、代謝促進や腸内環境の改善を通じて、肌の健康維持に寄与する可能性あり。
② オリーブオイル
【特徴】
オレイン酸が豊富で、抗酸化成分(ポリフェノール)も含む。オリーブオイルの摂取によって、腸内にビフィズス菌が増加したという動物実験の報告もあり。
【美容効果】
・肌のうるおい保持
・老化の原因となる活性酸素の抑制
・血流改善による肌のハリ維持
【ポイント】
食事に取り入れやすく、美容・健康両面にバランス良く働く。
③ 亜麻仁油
【特徴】
α-リノレン酸(オメガ3脂肪酸)が豊富。
【美容効果】
・肌の乾燥やかゆみの改善
・炎症抑制作用でニキビや肌荒れ予防
・髪の健康維持
【ポイント】
熱に弱いため、加熱せずドレッシングやスムージーに使用がおすすめ。
④ エゴマ油(シソ油)
【特徴】
α-リノレン酸(オメガ3脂肪酸)が豊富。
【美容効果】
・肌の保湿やハリ維持
・抗炎症作用で敏感肌や肌荒れに対応
・血流改善によるくすみ予防
【ポイント】
亜麻仁油と似ており、加熱せず摂取するのが望ましい。
⑤ ココナッツオイル
【特徴】
中鎖脂肪酸が豊富で抗菌作用もある。
【美容効果】
・代謝サポートによる体型維持
・肌や髪の保湿(外用でも利用可)
・抗菌作用でニキビや頭皮トラブル予防
【ポイント】
熱に強く加熱調理にも使える。摂取量は控えめに。
良質なオイルは、便秘改善だけでなく肌や髪に潤いを与えます。便が硬い、小さいなど便通トラブルが続く場合は、脂質が不足していないかチェックしてみましょう。
3. 十分な水分補給で便を柔らかく
水分は便を柔らかく保つだけでなく、腸の蠕動運動を助ける重要な要素です。
ダイエット中でも、1日1.5〜2リットルを目安に、水やお茶をこまめに摂るようにしましょう。朝起きてすぐの水分補給は、腸を目覚めさせるのに効果的です。
コーヒーやアルコールは利尿作用があるため、便秘の時は控え目に。
4. 糖分の摂取量を減らす
食事中の糖分が多いと、腸内細菌叢の構成に変化が生じ、いわゆる“悪玉菌”であるプロテオバクテリア属の菌数が増加します。
その一方で、主に食物繊維を分解して短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)を生成するバクテロイデス属の菌数が減少することが、動物実験により明らかになりました。

また、白砂糖は血糖値を急激に上昇させて、インスリンの分泌を促進します。
すると、今度はインスリンの過剰分泌によって、低血糖傾向に。この極端な血糖変動(血糖値スパイク)が体のエネルギー供給を不安定にし、体温調節に影響を与える可能性があります。
体温が低下すると、腸内温度も下がります。腸の温度が低いと、腸壁の筋肉の収縮力が弱まり、便の移動が遅くなり、便秘が悪化する原因になります。
腸内環境を整えるためには、白砂糖の摂取を控え、体温を適切に保つことが重要です。
5. 適度な運動で腸の蠕動運動を活性化
腸の動きは、腹筋や骨盤底筋など周囲の筋肉と連動しています。たとえ軽い運動であっても蠕動運動を刺激できるため、便秘改善に有効です。
ポイント
- ウォーキングや階段の上り下りなど日常に取り入れやすい運動
- ストレッチや腹筋運動で腸周囲の血流を促す
- 運動不足による腸の低活動を防ぎ、代謝低下もサポート
6. 睡眠・ストレス管理で自律神経を整える
睡眠不足や慢性的なストレスは交感神経を優位にし、腸の蠕動運動を鈍らせて便秘を招きやすくなります。
それに加えて、睡眠不足になると食欲を増進させるホルモン「グレリン」の過剰分泌を招きます。
その一方で、食欲抑制ホルモン「レプチン」の分泌量が減少。
太りやすく、便秘しやすいという悪条件が揃ってしまいます。

また、睡眠不足によって日中に強い眠気を感じることが多くなり、エネルギー消費量が低下し、肥満しやすくなります。
ポイント
- 睡眠時間の確保(目安:6時間以上)と就寝前のスマホや強い光の制限
- 深呼吸や軽い運動で副交感神経を優位にする
- 忙しい日中も、短時間のリラックス習慣を取り入れる
5. 腸内フローラを整える食品やサプリの活用
善玉菌を増やす食品やサプリを取り入れることで、腸内環境を安定させることができます。
特に30〜40代女性は、食生活の偏りやストレスで腸内フローラが乱れやすい傾向にあるため、補助的にサプリを活用するのもおすすめです。
ポイント
- BB536を含む発酵食品(ヨーグルトなど)
- オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ビートオリゴ糖)入りサプリ
- 食事で摂りきれない場合はサプリで善玉菌をサポート
まとめ|便秘対策は腸内環境と生活習慣の両面から!
便秘は単なる排便の悩みではなく、体重増加や体調不良にも直結する重要なサインです。
仕事や家事、育児で忙しい日々や、加齢によるホルモンの変化は、腸内環境や自律神経のバランスを乱し、便秘を引き起こす大きな要因となります。
便秘解消・改善に欠かせないポイントは、以下の4つです。
便秘解消・改善に欠かせないポイント
- 食物繊維のバランス摂取:水溶性・不溶性食物繊維を組み合わせて便通をスムーズに
- 十分な水分補給:便を柔らかく保ち、腸の蠕動運動を助ける
- 適度な運動:腹筋や骨盤底筋の活動で腸の動きを活性化
- 腸内フローラを整える食品・サプリの活用:善玉菌やオリゴ糖で腸環境を安定
これらを組み合わせて生活に取り入れることで、無理なく便通を改善し、体重や体調の変化を抑えられるでしょう。
便秘は長期間放置すると、体重増加やむくみ、腸内の悪玉菌優勢など、さまざまな負のスパイラルを引き起こす可能性があります。
まずは日々の生活習慣を見直し、腸内環境と自律神経の両面からアプローチすることが、スッキリ快適な毎日への第一歩です。
早速、今日から始めてみませんか。
【参考資料・出典】
※戎利光. "健康科学講座-朝食抜きや過激なダイエットによる悪影響." 福井大学教育学部総合自然教育センター年報 2 (1999): 54-57.
※宮崎総一郎, 北村拓朗, and 野田明子. "睡眠からアプローチする認知症予防." 日本耳鼻咽喉科学会会報 122.12 (2019): 1475-1480.