最終更新日:2025.1.20
便秘には原因によっていろいろな種類があり、便意を感じないタイプの便秘もあります。
便意がない便秘の場合、気付かないうちに便秘が悪化していることが少なくありません。
では、なぜ便意がない便秘になってしまうのでしょうか?
今回は、便意を感じない便秘になる原因や、便秘を解消するための方法などについて詳しく解説します。
便秘が続いている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
便秘の種類は、原因や症状によって細かく分類されています。
便秘は、何らかの原因によって腸内が変形して糞便の通過が阻害されるために起こる「器質性便秘」と、生活習慣や食生活、加齢など様々な要因が絡み合って起こる「機能性便秘」の2種類に分けられます。
便意を感じない便秘は、機能性便秘の「排出困難型」に含まれ、さらに「機能性便排出障害」に分類されます。
機能性便排出障害
機能的な障害により、直腸内の糞便を量的にも質的にも十分排便できない便秘。
排便困難感や、残便感などの症状があります(※1)。
【原因】
直腸感覚の低下や骨盤底筋協調運動障害などによって引き起こされます(※2)。
便意を感じない便秘は、機能性便排出障害の症状である“直腸感覚の低下”によるもので、「直腸性便秘(習慣性便秘)」と呼ばれる状態です(※3)。
便意は、S状結腸に十分な量の便が溜まって直腸に送り込まれることで、直腸の内圧が上昇し、直腸壁が伸びる刺激が大脳に伝わって起こります(※4)。
しかし直腸性便秘(習慣性便秘)になると、直腸に便が到達しても便意が起きません。
※1,2,3:尾髙健夫. "I. 慢性便秘の定義と分類." 日本内科学会雑誌 108.1 (2019): 10-15.
※4:細田誠弥. "生活習慣と排便異常." 順天堂医学 50.4 (2004): 330-337.
便意が起きない便秘である「直腸性便秘」になる原因には、生活習慣や加齢などが関係しています。
直腸性便秘になる要因を挙げていきます。
便意を感じてもトイレに行けない状況だったり、痔による排便時の痛みを避けるために便を出すことを我慢したりすると、次第に「便を出したい」という感覚(排便反射、便意)が鈍くなっていきます。
すると、便が腸にたまっても便意が起こらず、便がたまっていることに気付きません。
腸内に便がたまると、便に含まれる水分が腸管からどんどん吸収されていきます。
そうして便はカチコチの硬い便となり、排便しにくい状態となるのです。
そうなると、いきんでも簡単には出なくなって便秘の悪循環に陥ってしまいます。
便意(排便反射)は、加齢とともに感じにくくなります。
腸管壁には神経細胞が存在していますが、高齢になるほど刺激に対する感受性が低下。
排便反射が起こりにくくなります(※)。
朝食をきちんと食べることで胃や結腸が刺激されて、便意(排便反射)が起こります。
しかし、朝ごはんを食べないと胃腸が動かず、便意が起きません。
その結果、排便のタイミングを逃して便秘になってしまうのです。
便意がない便秘になりやすい人には、いくつかの特徴があります。
特に、腸内環境が悪化しやすい生活習慣や食生活を送っている人に多い傾向があります。
当てはまる項目が多い人は、注意が必要です。
長時間座っていると腸の動きが鈍くなり、腸内環境が悪化します。
ストレスは自律神経が乱れる原因です。
自律神経がバランスを崩すと腸内環境が悪化しやすくなり、便意の抑制を引き起こす要因となります。
脂肪分や糖分が多い食事は腸内環境を悪化させ、悪玉菌を増やします。
水分不足は便秘を引き起こし、腸内環境を悪化させる原因となります。
運動をしないと腸に刺激が加わらず、蠕動運動が鈍くなって便が腸内を移動しません。
そのため、便秘の悪化を招きやすくなります。
※細田誠弥. "生活習慣と排便異常." 順天堂医学 50.4 (2004): 330-337.
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慢性的な便秘は、体重増加や肌荒れを引き起こします。
また、場合によっては重篤な病気の発症要因にもなりかねません。
便秘が続くことで発症リスクの上昇が懸念される代表的な病気を挙げます。
便秘になると、腸内に滞留した便から有害物質が発生します。
それらの有害物質は体臭や口臭の原因となるほか、細胞の変異を引き起こして大腸がんになる危険性を高めます。
便秘が続くと、便に含まれる水分が腸で過剰に吸収されて便が硬くなります。
硬くなった便が瓶の栓のように腸管に詰まることで腸閉塞が起こり、急性の腹痛や嘔吐といった症状を引き起こします。
便秘は女性に多い症状ですが、加齢とともに男女比の差が少なくります。
高齢者の便秘率は高く、「2022(令和4)年国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると65歳以上の女性は73.8%、男性は68.1%が便秘の症状があると回答しています。
便秘になると自律神経が乱れて血行不良になり、痔核が形成されやすくなります。
また、便秘が続いて腸内で硬くなった便を排出する時に、過度な圧力が直腸や肛門にかかることも痔の発症リスクが高くなる要因です。
便秘によって腸の動きが低下して便が蓄積されると、盲腸周辺で炎症が生じやすくなります。
これが慢性的に続くと、盲腸(虫垂炎)が発生する可能性があります。
※中島淳, 大久保秀則, and 日暮琢磨. "1. 高齢者の慢性便秘症の病態と治療." 日本老年医学会雑誌 57.4 (2020): 406-413.
便意がない便秘を解消したり、便通を整えたりするためには、生活習慣や食生活の見直しが欠かせません。
すぐに実践できる便秘に効く方法をご紹介しますので、実践しやすいことから始めてみませんか。
便意がなくても、決まった時間にトイレへ行って便器に座るようにしましょう。
朝食後30分以内は、排便しやすいタイミングです。
決まった時間にトイレへ行くことで、体内リズムが整って便秘改善につながります。
もしも3分以上軽くいきんでも便が出ない場合はそれ以上無理にいきまず、夕食後に再びトイレへ行ってみましょう。
便意を感じない「直腸性便秘」になる原因の一つが、ストレスです。
ストレスがたまると自律神経が乱れて、交感神経と副交感神経がバランスを崩します。
交感神経は主に日中に働き、心拍数を増やしたり、血圧を上昇させたりして身体を活動的な状態にします。
精神的には興奮・緊張状態です。
一方、夕方以降は副交感神経へと切り替わって心身をリラックスさせ、睡眠への準備を整えます。
しかし、ストレスがたまっていると夜になっても交感神経が優位な状態が続き、副交感神経へと切り替わりません。
副交感神経には、睡眠中に腸の蠕動運動を促進する働きがあります。
そのため、睡眠時も交感神経が昂っていると腸が動かず、便秘になるのです。
就寝時間の前に、アロマテラピーや半身浴、ヨガ、深呼吸などリラックスできる時間を設けましょう。
便が腸内をスムーズに移動するために、脂質は欠かせません。
ダイエットのためやコレステロール値を気にして脂質を控えすぎると、便秘が悪化しやすくなります。
便秘解消・予防のためにも、質が良い脂質を摂るようにしましょう。
オリーブオイルは消化・吸収されにくいオレイン酸が豊富に含まれるため、腸まで届いて便通を促進します。
また、食物繊維が豊富に含まれる全粒粉やライ麦を使ったパンにつけて摂れば、さらなる便秘解消効果が期待できるでしょう。
牛乳に含まれる乳糖から作られる難消化性オリゴ糖の「ラクチュロース」には、大腸のビフィズス菌を増やして腸内環境を良くする作用があります。
ラクチュロースには、乳製品に含まれるカルシウムの吸収率を向上させる働きもあります。
加齢による骨粗しょう症や骨折を予防するためにも、乳製品を習慣的に摂ると良いでしょう。
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今回は、便意がない「直腸性便秘」について、その原因や解消法を解説しました。
生活習慣や食生活の見直すことで自律神経や腸内環境が整い、便秘解消・予防効果が期待できます。
もっと手軽に効率良く腸内環境を良くしたい人は、腸内環境の改善に欠かせない善玉菌であるビフィズス菌や、ビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖などが配合された腸活サプリを活用するのもおすすめです。
自分に合う方法で、便意が起きない便秘を治して毎日快適なお通じを目指しましょう。