最終更新日:2024.9.12
便秘には原因によっていろいろな種類があり、便意を感じないタイプの便秘もあります。
便意がない便秘の場合、気付かないうちに便秘が悪化していることが少なくありません。
では、なぜ便意がない便秘になってしまうのでしょうか?
今回は、便意を感じない便秘になる原因や、便秘を解消するための方法などについて詳しく解説します。
便秘が続いている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
便秘は、原因によって細かく分類されています。
便意がない便秘は、機能性便排出障害の症状である“直腸感覚の低下”であり、「直腸性便秘(習慣性便秘)」と呼ばれる状態です(※)。
※:尾髙健夫. "I. 慢性便秘の定義と分類." 日本内科学会雑誌 108.1 (2019): 10-15.
便意は、S状結腸に十分な量の便が溜まり、直腸に送り込まれることで直腸の内圧が上昇し、直腸壁が伸びる刺激が大脳に伝わることによって起こります(※1)。
まずは、直腸性便秘を引き起こすいくつかの原因について、解説していきます。
便意を感じてもトイレに行けない状況だったり、痔による排便時の痛みを避けるために出すのを我慢したりすることが何度も続くと、次第に「便を出したい」という感覚(排便反射、便意)が鈍くなります。
すると、便が腸にたまっても便意が起こらず、便の滞留に気付きません。
腸内に便がたまると、便に含まれる水分が腸管からどんどん吸収されていきます。
そうして便はカチコチの硬い便となり、排便しにくい状態となるのです。
そうなると、いきんでも簡単には出なくなって便秘の悪循環に陥ってしまいます。
便意(排便反射)は、加齢とともに感じにくくなります。
腸管壁には神経細胞が存在していますが、高齢になるほど刺激に対する感受性が低下。排便反射が起こりにくくなります(※2)。
朝食を食べることで胃や結腸が刺激されて、排便反射が起こります。
しかし、朝食を食べないと排便反射(便意)が起こりません。
その結果、排便のタイミングを逃して便秘になってしまうのです。
※1,2:細田誠弥. "生活習慣と排便異常." 順天堂医学 50.4 (2004): 330-337.
便秘とともに出やすい症状として体重増加や肌荒れなどがありますが、場合によっては重篤な病気の発症要因にもなりかねません。
次は、便秘と関係が深いとされている病気を挙げていきます。
便秘になると、腸内に滞留した便から有害物質が発生します。
それらの有害物質は体臭や口臭の原因となるほか、細胞の変異を引き起こす可能性も。
その結果、大腸がんの発症リスクを上昇させるのです。
便秘が続くと、便に含まれる水分が腸で過剰に吸収されて便がカチコチの状態に。
硬くなった便が腸管に詰まって腸閉塞が起こり、急性の腹痛や嘔吐などが引き起こされるケースが報告されています。
高齢になるほど、男女を問わず便秘の人が増加します。
高齢者の慢性的な便秘では、排便時の努責(いきみ)によって血圧が急上昇し、心筋梗塞をはじめとした心血管疾患を引き起こすリスクが高いことが指摘されています(※)。
便秘になると自律神経が乱れて血行不良になり、痔核が形成されやすくなります。
また、便秘が続いて腸内で硬くなった便を排出する時に、過度な圧力が直腸や肛門にかかることも痔の発症リスクが高くなる要因です。
便秘によって腸の動きが低下して便が蓄積されると、盲腸周辺で炎症が生じやすくなります。
これが慢性的に続くと、盲腸(虫垂炎)が発生する可能性があります。
※2:中島淳, 大久保秀則, and 日暮琢磨. "1. 高齢者の慢性便秘症の病態と治療." 日本老年医学会雑誌 57.4 (2020): 406-413.
便意がない便秘を解消したり、便通を整えたりするためには、生活習慣や食生活の見直しが欠かせません。
すぐに実践できる便秘に効く方法をご紹介しますので、できることから始めてみませんか。
便意がなくても、決まった時間にトイレへ行って便器に座るようにしましょう。
朝食後30分以内は、排便しやすいタイミングです。
決まった時間にトイレへ行くことで、体内リズムが整って便秘改善につながります。
もしも3分以上軽くいきんでも便が出ない場合は、夕食後に再びトイレへ行ってみましょう。
それでも出ないようなら、就寝前に腸もみやヨガなどを行って腸を刺激し、翌朝再チャレンジしてみることをおすすめします。
ただし、強くもみすぎたり、激しく動きすぎたりすると交感神経を刺激して眠れなくなるので、リラックスできる程度の力やゆっくりとした動きを意識しましょう。
便意を感じない便秘「直腸性便秘」になる原因の一つが、ストレスです。
ストレスがたまると自律神経が乱れて、交感神経と副交感神経がバランスを崩します。
交感神経は主に日中に働き、心拍数を増やしたり、血圧を上昇させたりして心身を活動的にします。精神的には興奮・緊張状態です。
一方、夕方以降は副交感神経へと切り替わって心身をリラックスさせ、睡眠への準備を整えます。
しかし、ストレスがたまっていると夜になっても交感神経が優位な状態が続き、副交感神経へと切り替わりません。
副交感神経には、睡眠中に腸の蠕動運動を促進する作用があります。
そのため、睡眠時も交感神経が昂っていると腸が動かず、便秘になるのです。
就寝時間の前に、アロマテラピーや半身浴、ヨガ、深呼吸などリラックスできる時間を設けましょう。
ダイエットのためやコレステロール値を気にして、脂質を控えている人も多いのでは?
しかし、便が腸内をスムーズに移動するために脂質は欠かせません。
オリーブオイルは消化・吸収されにくいオレイン酸が豊富に含まれるため、腸まで届いて便通を促進します。
食物繊維が豊富に含まれる全粒粉やライ麦を使ったパンにつけて摂れば、さらなる便秘解消効果が期待できるでしょう。
牛乳に含まれる乳糖から作られる難消化性オリゴ糖の「ラクチュロース」には、大腸のビフィズス菌を増やして腸内環境を良くする作用があります。
ラクチュロースには、乳製品に含まれるカルシウムの吸収率を向上させる働きもあるため、加齢による骨粗しょう症や骨折予防にも役立つでしょう。
今回は、排便を我慢することによって引き起こされる「直腸性便秘」について解説しました。
便意を感じないタイプの便秘を解消するためにも、毎朝決まった時間にトイレへ行くようにしましょう。
また、生活習慣や食生活の見直しによって自律神経や腸内環境が整い、さらに高い便秘解消・予防効果が期待できます。
しかし、便秘が長期にわたって続く場合や腹部に痛みを感じる場合は、専門医や医療機関を受診しましょう。
自己判断で市販薬を服用せず、医師による適切な診断と治療を受けることが重要です。
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