最終更新日:2024.2.6
便意を感じてトイレに行ってもなかなか出なかったり、硬いコロコロの便が少し出るだけだったりしてスッキリできなかった経験がある人も多いのではないでしょうか?
今回は、便秘の中でも「出そうで出ない」、出口で詰まる便に注目して、便が出口で詰まる理由や対処法、便が出口に詰まるのを予防する方法などについて解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
便秘は、誰にでも起こり得る身近なトラブル。そのために軽く見られ、放置されがちな症状でもあります。しかし便秘を放っておくと、最悪の場合、命に危険が及ぶ場合も…。
便秘患者と非便秘患者を15年間にわたり追跡調査した結果、便秘患者は非便秘患者に比べて生命予後がかなり悪いことが明らかになりました。
原因の一つとして、排便時の努責等による循環器系負荷による心血管イベントの発生リスクが高くなることが考えられています。
また、排便回数が少なくなるにつれて心血管イベントが有意に増加することが報告されているほか、慢性便秘症患者は非便秘症患者と比較して慢性腎臓病の発症が多いことが分かりました(※)。
便秘が続くと腸内に硬い便が滞留し、糞便塞栓(ふんべんそくせん)と呼ばれる便の蓋のようなものが肛門を防ぐように形成されることがあります。
糞便塞栓は非常に硬く、指や器具を使ってかき出さなければなりません。高齢者や子供の便秘は、糞便塞栓が原因である場合があります。
※:中島淳, 大久保秀則, and 日暮琢磨. "1. 高齢者の慢性便秘症の病態と治療." 日本老年医学会雑誌 57.4 (2020): 406-413.
正常な排便とは「適切な量の便(日本人では平均200g/日程度)」を「適切な硬さ(便の硬さや形状から排便の状態をチェックするブリストルスケールの3~5)」で「適切な回数(3回/日~3回/週)」、「適切な場所」で「適切な時間」に快適に排泄できることとされています(※1)。
正常な排便に対して、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」であると慢性便秘症診療ガイドラインでは定義しています。
便秘は、原因や症状によっていくつかのタイプに分類されます。
便秘のタイプ | ||
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A.器質性便秘 大腸に携帯的な病的変化を認めるもの |
a.狭窄性 大腸内が狭窄することで物理的に便の通過が阻害されて起こる便秘 |
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b.非狭窄性 大腸の狭窄はないものの形態的変化によって起こる便秘 |
①排便回数減少型 腸内で糞便の移送が障害され排便回数が減少する |
|
②排便困難型 直腸に形態的変化を起こし、直腸から体外へ糞便を十分に排出できないため、排便困難感や残便感をきたす |
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B.機能性便秘 | ①排便回数減少型 排便回数や排便量が減少し、過剰な量の糞便が大腸に貯留するため、腹部膨満感や腹痛などの症状が起こる |
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②排便困難型 直腸や肛門の排便機能が低下したため、直腸内の糞便を量的にも質的にも十分に排出できず排便困難感や残便感を感じる |
※:尾髙健夫. "I. 慢性便秘の定義と分類." 日本内科学会雑誌 108.1 (2019): 10-15.を基に作成
排便困難とは「15分以上の排便時間、残便感、下剤の常用、強い努責、浣腸の常用または用手排便などの症状を一つ以上認め、そのため苦痛が強いもの」と述べられています(※2)。
出口で便が詰まる人は、便秘のタイプのうち「排便困難型」に該当すると考えられるでしょう。
便が硬いため、一度で出し切ることができず分割され、直腸内に便の塊が残って出口に便が詰まったような残便感を覚えるのです(※3)。その場合、一日に何度もトイレに入ることが増え、日常生活に支障をきたすことが珍しくありません。
では次に、出口で便が詰まる原因について解説していきます。
※1:須藤紀子. "高齢者の排尿・排便障害." 日本老年医学会雑誌 49.5 (2012): 582-585.
※2:朝比奈完. "Videodefecography による排便障害の形態的研究." 日本大腸肛門病学会雑誌 47.5 (1994): 381-392.
※3:中島淳, 冬木晶子, and 大久保秀則. "便秘症の診断と治療―最新の進歩." 日本内科学会雑誌 106.11 (2017): 2453-2460.
トイレでいきんでも便が出ない、出口のすぐ前まで来ている気がするのに便が出ない…。便が出口で詰まる原因は何でしょうか?便の詰まりを引き起こす主な原因を挙げていきます。
何らかの理由によって腸の機能が低下すると、蠕動運動が鈍くなるために便が腸内をスムーズに移動できなくなります。
便が腸内に停滞する時間が長くなると、便に含まれる水分が腸内で過剰に吸収され、カチコチの硬い便に。コロコロとした兎の糞のような形になり、排出しにくくなります。
便を出す時には、腹圧を上昇させる「いきみ」が必要です。しかし、腹筋の筋力が弱い女性や筋力が低下している高齢者は、排便に必要なだけの「いきみ力」が足りず、十分な量の便を排出できない場合がしばしばあります。
便意を我慢することが多かったり、下剤や浣腸を頻繁に使ったりすることで排便反射が低下して起こる便秘を「直腸性便秘」と呼びます。
出口で便が詰まる症状の場合、直腸性便秘である場合が多いとされています。排便反射が正常に機能しないため、便が肛門近くまで来ても便意が起こらず、気付かない間に便秘が悪化している場合が少なくありません。
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便が出口で詰まっているように感じてスッキリできない時におすすめの改善法が、排便姿勢の見直しです。
理想の排便スタイルは、ロダンの「考える人」のポーズ。その理由は、日本人の体の特徴にあります。
欧米人の場合、肛門と直腸の角度である「肛門直腸角」は比較的緩やかで、洋式便座に普通に座っていても排便に支障はありません。しかし、日本人の肛門直腸角は折れ曲がりが強く鋭角であるため、洋式便座にただ座っただけでは排便しにくいのです。
しかし、ロダンの「考える人」の彫像のように上半身は肘を膝につける前かがみ姿勢をとり、足元には台を置いて膝の位置を高くすると直腸肛門角が緩やかになるため、腸内を便が移動しやすくなります。
日本人にとって、理想的な排便スタイルは和式トイレにしゃがんだ姿勢です。しかし、現在の住宅事情を考えるとなかなか難しい話。そのため、排便時は「考える人」のポーズをとりましょう。排便姿勢を変えるだけでも、便の出口詰まりを解消できるかもしれません。
便秘がひどい場合は、便秘薬の服用を検討する人が多いかもしれません。便が出口で詰まる場合は、便を柔らかくする効果がある便秘薬を選びましょう。
出口で詰まっている硬い便を軟化させる効果があります。しかし、血中のマグネシウム濃度が濃くなる「高マグネシウム血症」を引き起こす可能性もあるため、服用時は注意が必要です。
腸内の水分を増やして便を柔らかくします。腸の蠕動運動を促進して、スムーズな排便を手助けします。
ただし、下剤を乱用すると便秘が悪化したり副作用が発生する可能性があるため連日の服用は避け、生活習慣や食生活の見直しにて根本的に改善するようにしましょう。
出口に便が詰まらないようにするためには、排出しやすい便の硬さを保ち、腸内環境を改善することが重要です。
また、自律神経を整えることも便秘解消において大切です。「蠕動(ぜんどう)運動」は、リラックスし身体を休めている時に働く「副交感神経」が優位になると活発になり、逆に活動・興奮状態の時に働く「交感神経」が優位なタイミングでは停滞します。
自律神経のバランスが乱れると蠕動運動が十分に行われなくなり、便秘につながります。
毎日少しでも排便できるようになれば、直腸の拡大やさらなる便の硬化を予防できます。便秘の解消・予防のために実践したい生活習慣をご紹介します。
体内の水分が不足すると、腸内の便が固くなり排出されにくくなります。便秘を防ぐために、1日に1.5~2リットルの水分を摂ることを心がけましょう。
便秘の解消・予防に効果的な食物繊維。便が固くなって詰まる便秘の場合は、便を柔らかくする作用がある「水溶性食物繊維」を摂取するのが効果的です。
水溶性食物繊維はワカメなどの海藻類やキウイ、納豆などに多く含まれます。
ビフィズス菌は腸内で悪玉菌の増殖を抑える「酢酸」を作り出し、腸内環境の改善に役立ちます。ヨーグルトを選ぶ際は乳酸菌だけではなく、ビフィズス菌が入ったものを選びましょう。
遅くとも就寝2時間前に夕食を済ませておくことで、睡眠中に抗ストレスホルモンである成長ホルモンの正常な分泌が促進されます。
就寝2時間程度前にぬるいお湯に浸かることで副交感神経が優位になり、寝つきが良くなります。寝つきが良くなると睡眠の質が高くなり、腸内環境も整いやすくなります。
目覚めてすぐに光を浴びると、全身の細胞の時計遺伝子が活性化して体内時計がリセットされ、活動モードになります。“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの分泌もスタート。セロトニンは自律神経の調節にも関係しているため、十分な分泌を促すことが大切です。
また、セロトニンは“睡眠ホルモン”であるメラトニンの原料でもあります。日中にセロトニンが正常に分泌されるとメラトニンの量も多くなり、睡眠の質を高める効果が期待できるでしょう。
運動不足は自律神経機能を低下させますが、習慣的に運動を行なうことで機能が回復することが分かっています。
ある小学校の全児童305名を対象として1年間の運動介入を行った結果、介入前に自律神経活動が低下していた児童は、有意な改善が認められました。
かにも、自律神経活動が可逆性を持っていることが示唆される実験結果が報告され、習慣的な運動が自律神経活動の低下に起因する肥満やうつの発症などの予防につながる可能性があると考えられています(※)。
朝食は、自律神経を切り替えるスイッチのような役割を果たします。
セロトニンの原料となる物質・トリプトファンを含んだバナナや納豆、豆腐、ヨーグルトなどを積極的に摂るようにしましょう。水溶性食物繊維が多く含まれた食材も便秘改善・予防には効果的です。
朝起きる時間や寝る時間、食事のタイミングなど毎日を同じタイムスケジュールで過ごすことで、体内時計が整って自律神経のバランスも良くなります。
また、直腸性便秘の人は、便意がなくても毎日同じタイミングでトイレに行くことが大切。決まった時間にトイレへ行くことで、排便を習慣化できるようになるでしょう。
※:森谷敏夫. "自律神経機能と運動 (シンポジウム 2 「自律神経」,特集 第43回日本女性心身医学会学術集会報告)." 女性心身医学 19.3 (2015): 271-277.
今回は、出口で詰まる便の原因や対処方法、便を詰まらせないための自律神経の整え方などについて解説しました。
健康寿命と腸内環境は密接な関係があります。腸内環境を整えるためにも、生活習慣の改善や食生活の見直しを実践して、お腹をスッキリさせましょう。
便秘予防のために、腸内に善玉菌を増やす作用があるビフィズス菌やオリゴ糖などを含んだサプリを摂るのもおすすめです。
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