最終更新日:2025.11.10
慢性便秘が仕事の効率を下げる?日本人2,351人の実態調査で明らかになった“働く力”への影響
仕事中にお腹の張りや不快感で集中できない——そんな経験はありませんか?
日本人の慢性便秘患者を対象とした大規模なインターネット調査では、慢性便秘の症状が仕事の生産性や日常生活に大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。
本記事では、2351名を対象とした調査結果をもとに、便秘がどのように「働く力」や「日々の活動」に影響するのかを詳しく紹介します。
調査の概要 | 慢性便秘と「仕事の生産性」「日常活動障害」の関連性
今回の研究は、日本人の慢性便秘患者を対象に行われた横断的・観察的・ウェブベース調査です。
下剤の使用有無に関わらず、便秘の症状と「仕事の生産性」「日常活動障害」との関連を評価しました。
調査には、労働生産性および活動障害を測定する質問票が使用されました。
▶調査対象の概要
- 対象者数:2,351名
- 平均年齢:51.7歳(標準偏差13.8歳)
- 性別:女性80.7%、男性19.3%
- 罹病期間:10年以上が63.3%
- 就労者数:1,424名
慢性便秘による生産性の損失
研究の分析によると、慢性便秘を抱える人は仕事の効率や日常活動のパフォーマンスが低下する傾向があることが示されました。
具体的な指標は以下の通りです。
▶慢性便秘による生産性の損失
- 全活動障害:仕事・家事など日常全体への支障は39.2%
- 全労働生産性障害:仕事への総合的な影響は33.9%
- 勤務中の生産性低下:プレゼンティーイズム(出勤していても能力を発揮できない状態)は31.2%
- 欠勤:アブセンティーイズム(体調不良などによる欠勤)は5.0%
つまり、慢性便秘のある人は、勤務していても約3割の時間で本来のパフォーマンスを発揮できていない可能性があるということです。
さらに、患者1人あたりの年間労働生産性損失は約134万3000円と推定されており、これは単に個人の健康問題にとどまらず、社会的・経済的損失としても無視できない規模といえるでしょう。
慢性便秘で多く報告された症状
グラフは、本研究で報告された主要な便秘症状の出現割合をまとめたものです。
最も多かったのは「腹部膨満感(56.0%)」で、過半数の患者が“お腹の張り”を感じていました。
この結果から、腹部の膨満感や不快感、排便タイミングの不安定さといった症状が特に多く、これらが仕事の集中力低下や生活の質(QOL)の低下につながる主要因であることが示唆されました。
特に影響が大きい便秘関連の症状とは?
便秘によって引き起こされるすべての症状が、仕事や日常生活へ同じように影響するわけではありません。
論文では、慢性便秘に伴う各症状が「仕事の生産性」や「日常活動の支障」にどのように関係しているかを分析しています。
解析の結果、仕事の効率を大きく下げていたのは「腹部不快感や吐き気」「腹痛」「お腹の張り」「排便時刻の予測困難」でした。
「会議中にお腹が痛くなったらどうしよう?」…そんな不安が集中力をそぎ、業務の質を落としてしまう場面が想像できます。
▶労働生産性(total work impairment)と有意に関連した症状
- 腹部不快感・吐き気:Abdominal discomfort / nausea
- 腹痛:Abdominal pain
- 腹部膨満感:Abdominal bloating
- 排便タイミングの予測不能:Unpredictable defecation timing
一方で日常生活への影響を見ると、さらに「排便の衝動がない」「出し切れない感覚」「いきむ必要がある」といった症状も関係していました。
突然の便意を恐れて買い物や人と会う約束を控えたり、趣味を楽しむ余裕を失ったり。数字の背後には、そんな生活の縮小が隠れています。
▶日常活動(total activity impairment)と有意に関連した症状
- 腹部不快感・吐き気:Abdominal discomfort / nausea
- 腹部膨満感:Abdominal bloating
- 腹痛:Abdominal pain
- 残便感:Incomplete defecation
- 排便タイミングの予測不能:Unpredictable defecation timing
- 排便意欲の喪失:Loss of defecation desire
- いきみ:Straining
これらの結果から、慢性便秘による影響は単に身体的な不快感にとどまらず、仕事や生活の質を左右する多面的な問題であることが明らかになりました。
症状の種類によって負担の現れ方が異なり、社会的活動の範囲や心理的な余裕にも波及していることが示唆されます。
慢性便秘治療後の改善傾向 | 7割以上の人が治療の効果を実感
つらい便秘による不調も、「治療によって変わった」と感じる人が少なくありません。
下剤などの治療を受けた患者の7割以上が、仕事や日常生活の質が向上したと回答しました。
「仕事の効率が上がった」「日常生活が楽になった」といった声も多く、治療の効果が確かに表れていると言えるでしょう。
▶治療後の改善傾向
- 作業生産性が改善した患者:71.2%
- 日常活動が改善した患者:72.6%
つまり、治療を行った人のおよそ7割以上が「働きやすくなった」「日常生活が楽になった」と感じていることになります。
完全に症状が消えなくても、「負担が軽くなった」ことが生活の質の向上につながっていると考えられます。
なお、この調査は横断的デザインであるため、治療の種類や期間ごとの効果までは分析されていません。そのため、「どの治療が最も効果的であったか」までは断定できない点に留意が必要です。
まとめ | 慢性便秘は“生活の質”だけでなく“働く力”にも影響する
今回の研究は、日本人の慢性便秘患者2,351名を対象に、便秘症状と労働・日常活動の関係を明らかにしたものです。
その結果、腹部の不快感・膨満感・排便タイミングの不安定さなどの症状が、仕事の効率や生活の質(QOL)を大きく低下させていることが示されました。
研究によって明らかになったのは、以下の点です。
▶研究からわかった主なポイント
- 慢性便秘のある人:全労働生産性障害が平均33.9%に達する
- 経済的影響:年間の経済損失は1人あたり約134万3000円と推定される
- 影響要因:腹部関連の症状や排便の予測不能さが、仕事・生活両面に強く影響する
- 治療効果:治療を受けた患者の約7割が作業効率や日常活動の改善を実感している
これらの結果は、慢性便秘が「体調の一時的な不良」ではなく、個人の生産性や社会経済にも関わる健康課題であることを示しています。
また、治療による改善が確認されている点からも、症状に応じた医療的介入が「働く力の回復」に寄与する可能性が示唆されます。
慢性的な腹部の張りや排便リズムの乱れを感じたら、我慢せず早めに専門医へ相談することが重要です。
「たかが便秘」と放置せず、適切に治療・ケアを行うことは、自分自身の快適な毎日だけでなく、社会全体の生産性向上にもつながるといえるでしょう。
【参考資料・出典】
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この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会 食品保健指導士
・管理栄養士
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾病の診断や治療を意図するものではありません。症状や健康面にご不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、専門の医師による診断と指導をお受けください。
本記事の内容に起因するいかなる結果についても、筆者および運営者は責任を負いかねますのでご了承ください。
