最終更新日:2024.3.1
自分が出した便の色をチェックしていますか? 便の色や硬さは健康のバロメーターです。
もし油っぽくて白い便が出ている場合は、注意が必要かもしれません。
油っぽくて白い便は「脂肪便」と呼ばれ、内臓が何らかの問題を抱えている時に排泄されやすい便です。
今回は「脂肪便」について、その特徴や脂肪便が出る原因、脂肪便を防ぐための対策法などを解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
脂肪便は、通常の便よりも脂質の含有量が多く、特有の性状を持つ排泄物です。
水に浮いてキラキラとした光沢がある、あるいは石けんの被膜がある下痢便が脂肪便であると言われています(※)。
脂肪便の多くは油っこいものを食べ過ぎて消化不良を起こした際に見られますが、病気の症状の一つとして引き起こされている場合が少なくありません。
※:中村光男, and 丹藤雄介. "慢性膵炎における脂肪便の病態解析." 日本消化器病学会雑誌 97.11 (2000): 1347-1354.
便の色は主に「ビリルビン」と呼ばれる胆汁の色素で決まります。
胆汁は最初の段階では黄色ですが、腸内細菌によって「ウロビリノーゲン」へと代謝され、茶色の色素である「ステルコビリン」に変化。
この色素が便の色のもとになり、腸内環境が良好な場合には深い茶色から黄褐色をした便が排出されます。
便の色が白くなる主な原因として、胆汁の生成不足あるいは阻害が考えられます。
胆汁は肝臓で生成され、胆嚢に貯蔵された後、脂肪の消化を助けるために小腸に放出されます。
胆汁中には便に色を与えてる色素「ビリルビン」が含まれているため、胆汁の正常な流れや排泄が妨げられると、便の色が白くなるのです。
便の色が白い場合、以下の病気が影響を与えている可能性があります。
胆道が閉塞されると、胆汁が正常に小腸に排泄されません。これにより、便が白くなります。
胆石、胆嚢や胆道の腫瘍、先天性の異常などが胆道閉塞の原因となります。
肝硬変、肝炎、肝性脳症など、肝臓の病気によっても胆汁の生成が減少する可能性があり、便が白くなる原因につながります。
慢性膵炎をはじめとした膵臓の病気が進行すると胆汁の排泄量が低下し、便の色を白色へと変化させる場合があります。
特定の薬物や医薬品は、胆汁の色に影響を与える可能性があります。
便の色が白~灰色になる主な薬剤は、胃や十二指腸などの検査で服用するバリウムです。
遺伝的に肝臓のビリルビン処理に問題があるため、便の色が薄くなることがあります。
人口の3~16%程度に存在するとされ、ストレスや低カロリー状態、妊娠などによってビリルビン値が変動する特徴があります(※)。
健康上に影響はないため、通常は治療を必要としません。
生後6カ月~2歳程度の乳幼児に多い、ロタウイルスという感染力が強いウイルスによって起こる病気です。
ロタウイルスが胆汁の分泌を阻害するため、米のとぎ汁のような白っぽい色の下痢便が大量に出ます。
※:亀谷富夫. "10 年間の観察からみた体質性黄疸の頻度." 人間ドック (Ningen Dock) 37.3 (2022): 475-479.
便が白いことに加えて、油っぽい「脂肪便」が出ることが多い疾患が「慢性膵炎」です。
慢性膵炎の場合、膵臓の機能低下に伴って脂肪を消化する酵素「リパーゼ」が不足し、脂肪が消化・吸収されずに脂肪便として排泄されます。
慢性膵炎によって発生する膵性脂肪便は90%以上が有形で、太く、量が多く、淡い黄色で、脂肪の塊がまだら状にあったり、全体に光沢があったりします。
ニオイはタンパク質が腐敗した悪臭や酸性臭があることが少なくありません(※)。
※:中村光男, and 丹藤雄介. "慢性膵炎における脂肪便の病態解析." 日本消化器病学会雑誌 97.11 (2000): 1347-1354.
便の色は健康状態によって変化し、その陰には病気が潜んでいる場合も。何らかの病気にかかっている場合に出やすい便の色と原因を紹介します。
排便後はすぐに流すのではなく、便の色を確認する習慣をつけましょう。
消化管から出血がある場合、便が黒くなったり、タール状になったりすることがあります。
これは胃や十二指腸からの出血によって引き起こされ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道静脈瘤などの病気が関与している可能性があります。
赤色の便が出た場合、便中に血液が混じっている可能性があります。
その場合、出血性大腸炎、痔、大腸ポリープ、大腸がんなどの病気が考えられます。
緑色の便は、食べた物の影響や腸の動きが速いことによる場合がほとんどです。
しかし、感染症や急性の胃腸炎が関与している可能性もあるため、緑色の便が続く場合は医療機関を受診した方が良いでしょう。
「体内にたまった脂肪便を出すダイエットで痩せた」「脂肪便が出るとダイエットが成功している」。そのような情報を見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか?
しかし、脂肪便とダイエットの関係性については疑問を呈する声も多く、脂肪便が出た=体内の脂肪が減ったことにはつながらないと考えられます。
脂肪便とダイエットの関係性で誤解されやすい部分と、実際のところについて解説します。
脂肪便が出ることは、必ずしもダイエット効果とは関係ありません。
脂肪便が生じる原因は様々で、健康な食生活や消化器官の正常な機能に影響を与える病気などが考えられます。
脂肪便は健康上の問題や病気のサインである可能性があるため、自己判断せずに専門家の意見を仰ぎましょう。
脂肪便が出たとしても、体脂肪が適切に減少しているわけではありません。
脂肪便の原因は様々で、脂肪の過剰な摂取や脂質代謝異常、吸収障害などが考えられます。
ダイエットの成功は、単に脂肪量が減少するかどうかだけでなく、バランスの取れた食事、適度な運動、生活習慣の改善など多くの要因に依存します。
体重や体脂肪率、健康状態などを総合的に評価する必要があります。
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脂肪便や白っぽい便の予防には、日頃の生活習慣や食生活を整えることが大切です。
正常な便の排出や、便秘を防ぐ良好な腸内環境をつくるために効果的な方法をご紹介します。
「概日リズム」とは、生物学的なプロセスが24時間周期で変動する自然なサイクルのことを指します。
昼夜の変化に同期して体温やセロトニンやメラトニンをはじめとしたホルモン分泌、覚醒度などが変動することで、昼間は活動が促進され、夜間は休息が促進されます。
概日リズムは食事のタイミングや睡眠と密接に関連しています。そのため、規則正しい生活を送ることで概日リズムが整い、腸の機能が安定して脂肪便の発生を抑制できます。
自律神経は交感神経と副交感神経から成り立っています。
交感神経は「戦うか逃げるか」の応急的な状況に対応するための反応を促進し、心拍数や血圧を上昇させ、腸の運動を抑制します。
一方で副交感神経は「休息・消化・吸収」の状態を促進し、心拍数や血圧を下げ、腸の動きを活発化。消化や排便を促進します。
しかし、自律神経が乱れると交感神経と副交感神経の切り替えが上手くいかず、胃や腸の正常な動きが阻害されて消化不良や便秘の原因に。消化不良は脂肪便の大きな要因です。
自律神経の適切なバランスを保つためには、リラックス法や深呼吸を取り入れることが重要です。
寝ている間に副交感神経が優位になることで、脂肪便を予防できるでしょう。
食事を急いで大量に摂ると消化不良になり、脂肪便を引き起こす可能性があります。
小分けにして一口につき30回以上噛むことを心掛けましょう。腸が適切に食物を処理しやすくなり、脂肪便の予防につながります。
脂肪便が出る「慢性膵炎」は、アルコールの摂取が原因で起こることが多い病気です。
アルコールが原因の慢性膵炎は「アルコール性慢性膵炎」と呼ばれ、発症は飲酒量と関連すると考えられています。
1日あたりの飲酒量がエタノール換算100g以上の場合、お酒を飲まない人に比べて11.2倍の発症リスクがあるという報告も(※)。
脂肪便が出やすい人はアルコールを控えるようにしましょう。
※:正宗淳, and 下瀬川徹. "アルコールと膵炎." 日本消化器病学会雑誌 109.9 (2012): 1526-1534.
今回は、脂肪便や白っぽい便が出る原因や対策などについて解説しました。
脂肪便が出たり、便の色が白っぽくなったりする場合は、何らかの腸の不調や消化器官の問題が潜んでいる可能性があります。
便を出したら色をチェックして、通常とは異なる色の便が続く場合は医師や医療機関へ速やかに相談しましょう。
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