最終更新日:2024.2.27
「便意を感じてトイレに行っても、おならしか出ない」「ガスがお腹にたまって苦しい」「おならがよく出る」「おならが臭い」といった経験をしたことはありませんか?
お腹にガスがたまる要因の一つが、便秘です。また、便秘はおならが臭くなる原因にもなります。
そこで今回は、便秘でおならが多くなる、臭くなる原因や解消法などについて解説します。
ガスによる膨満感で苦しい思いをしたり、おならの臭いに悩んでいる人はぜひ改善の参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
お腹の中にたまるガスの約70%は口から飲み込んだ空気、残りが腸内で発酵した食べ物から発生したガスと血液中から拡散したガスが混ざり合ったものです。
まずは、おならが増える原因を挙げていきましょう。
早食いの人は噛む回数が少なく、食べ物と一緒に空気を飲み込みやすい傾向にあります。
飲み込んだ空気の多くはげっぷとして排出されますが、げっぷを我慢した場合は飲み込んだ空気が腸へと下がり、おならとして排出されます。
また、噛む回数が少ないと食べ物があまり細かくならない状態で胃や腸に送られます。すると消化不良が起こりやすくなり、腸内に停滞して発酵・腐敗が進みます。
発酵・腐敗した食べ物からは悪臭を伴うガスが発生し、おならとして排出されるのです。
便秘の解消や予防には食物繊維が欠かせません。
しかし、食物繊維は小腸で消化されず、大腸まで到達して腸内細菌によって発酵分解され、SCFA(短鎖脂肪酸)、炭酸ガス、水素ガス、メタンガスなどを生成します。
また、食物繊維のうち不溶性食物繊維は便の量を増やし腸を刺激することで排便しやすい状態を整えますが、便秘が悪化している場合は腸内に便がとどまり、腸管で便の水分が過剰に吸収されて硬い便となって便秘が悪化する原因に。
そのため、おなかにガスがたまっている時や便秘が悪化している状態では食物繊維を多量に摂ることは控えつつ、不溶性食物繊維よりも、便を柔らかくし善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維を意識して摂取するようにしましょう。
牛乳をはじめとした乳製品に含まれているラクトース(乳糖)が原因で、下痢や腹痛、排ガス増加といった消化不良を起こすのが「乳糖不耐症」です。
乳糖不耐症の原因は、小腸にあるラクターゼ(乳糖分解酵素)の欠乏あるいは欠損であると考えられ、日本人は成人の約98%がラクターゼ欠乏であり、そのうち20%は乳糖不耐症とされています(※1)。
ラクターゼ活性は乳幼児期がもっとも高く、加齢とともに低下。
小腸でのラクターゼが欠乏した状態で乳製品を摂ると、小腸で分解されなかったラクトースが大腸に入り、腸内細菌によって急激に発酵されて腸内ガスや乳酸、短鎖脂肪酸を多量に産生します(※2)。
その結果、おならの回数が増えるのです。
ストレスがたまると無意識に奥歯を噛みしめることが多くなり、唾を飲み込む回数が増加。それと同時に多量の空気を飲み込みやすくなります。
こういった症状は「呑気症(空気嚥下症)」と呼ばれ、ゲップやおならの回数が増えたり、お腹の張りや胃の不快感を覚えたりする原因の一つです。
症状を改善する方法として、ゆっくり食べることや炭酸飲料の摂取を控えることが有効であると考えられています(※3)。
自律神経は心拍や呼吸、代謝や消化など体内の様々な機能を、自分の意思とは関係なく自動的に調節する神経系です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、この2つが1日のうちでスムーズに切り替わることで健康な状態が保たれています。
しかし、自律神経は生活習慣やメンタルの状態などで乱れやすく、バランスを崩すと便通や睡眠をはじめとした全身の不調を招きます。
胃腸の働きも低下して消化不良になり、腸内で食べ物が停滞して発酵・腐敗。ガスが発生しておならとして体外に排出されます。
腸内環境も悪化し、悪玉菌が増殖してガスが発生しやすい状態になるのです。
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は、腸管に異常がないにもかかわらず、慢性的に腹痛を伴った下痢や便秘、急激な腹痛、腹部膨満感などが起こる疾患です。
過敏性腸症候群は国際的な診断基準によって「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」の4タイプに分類され、分類不能型の中にガスで腹部が張る「ガス型」が加えられる場合があります。
※1:近藤孝晴, 奥村直也, and 下内章人. "生体ガスと病気の診断." におい・かおり環境学会誌 48.6 (2017): 402-409.
※2:山田和彦. "炭水化物の消化・吸収・発酵とその利用." 栄養学雑誌 59.4 (2001): 169-176.
※3:河西ひとみ, et al. "腸管ガスに関連する症状を主訴とする病態と治療法の研究の動向―過敏性腸症候群・呑気症・自己臭症の視点から―." 心身医学 58.6 (2018): 488-497.
おならがやけに臭いのは、腸内環境が悪化して悪玉菌が増殖しているせいかもしれません。
ヒトの腸管内には約1000種、100兆個を超える腸内細菌が存在し、腸内細菌のかたまりは腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれています。
腸内細菌叢はヒトに有益な作用をもたらす「善玉菌」(ビフィズス菌、乳酸菌など)、有害な影響を与える「悪玉菌」(ウェルシュ菌、クロストリジウムなど)、腸内環境が良い時には善玉菌の味方となり、体力が低下すると悪玉菌になる「日和見菌」で形成されています。
この中で、悪玉菌のウェルシュ菌は体内でタンパク質を分解・腐敗させて様々な有害物質を産生し、おならの臭いを悪化させます。
有害物質の中には発がん性物質が含まれている可能性も高く、がんを予防するためには腸内細菌叢を善玉菌優勢な状態にすることが大切です。
肉類は悪玉菌のエサとなるため、肉中心の食生活を送っているとおならが臭くなる傾向に。
さらに、脂肪分が多い食べ物は消化に時間がかかるため、腸内で発酵してガスが出やすくなります。
ほかにおならが臭くなる食べ物には、硫黄成分が多く含まれているニンニクやネギなどがあります。
ガスが出やすい時やお腹が張っている時は、これらの食べ物は控えた方が良いでしょう。
腸内環境とも深いつながりがある便秘も、おならの量や臭いに影響を与えます。
便秘になると食べ物が腸内に留まる時間が長くなり、分解・発酵する際に発生するガスの量も増え、便とともに溜め込まれていきます。
またガスが排出されたとしても便はなかなか出ないため、トイレに行ってもおならしか出ないといった状態になります。
便が滞留することで腸内環境が悪化。悪玉菌が増え、便を腐敗させる過程で硫化水素やインドール・スカトールといった悪臭のガスが発生しやすくなります。
悪玉菌が増えることは便秘の原因となるため、腸内環境の悪化と便秘の悪循環に陥り、おならの臭いも改善が難しくなってしまいます。
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ガスが溜まりお腹が張っていると、いつおならが出るか分からず、シンとした場所や状況に不安を覚えることも多いのでは?
人と会っていても「おならが出たらどうしよう」と気になって、外出が億劫になるかもしれません。
次は、お腹のガス溜まりを即効で解消するための方法をご紹介します。お腹が張って苦しい時に試してみてくださいね。
おならが出やすい原因として、腸の蠕動運動が活発すぎる可能性も考えられます。
ペパーミントオイルに含まれるメントールは、下部消化管に直接作用して平滑筋を弛緩させる作用があり、腸の蠕動運動を抑制します(※1)。
ガスによる腹部の膨満感が強い時は、ペパーミントティーを飲んで様子を見るのもおすすめです。
ただし、腸の蠕動運動が低下すると便秘を引き起こします。飲みすぎには注意しましょう。
腰と背中を蒸気シートや湯たんぽ、蒸しタオルなどで温めることで、ガスの排出や便通が促進されることが研究により実証されています。
便通に何らかの問題を抱えている54名(24歳~97歳)に対して、お湯で温めて絞ったタオルをうつぶせの状態で腰背部に10分間貼り付ける「温罨法(おんあんぽう)」を実施したところ、40.8%に排ガス効果があり、47.4%が排便効果を得られました(※2)。
排ガス効果が得られたタイミングは温罨法中が最も多く、温罨法中から30分までが48.4%、60分までが61.3%でした。
また、温罨法中に排ガスがあり、さらに5~10分後あるいは60分後に再び排ガスがあった例も報告されています(※3)。
お腹にガスがたまって苦しい時は、排ガス効果が期待できるヨガのポーズを試してみましょう。ただし、体に痛みを感じた場合はすぐに中止を。
ガス抜きのポーズ
バッタのポーズ
※2,3:菱沼典子, et al. "熱布による腰背部温罨法の排ガス・排便に対する臨床効果." 聖路加看護学会誌 4.1 (2000): 30-35.
便秘がちでおならがよく出る、おならが臭いという人は、腸内環境が悪化しているかもしれません。
腸内環境の悪化は、便秘だけでなく肌荒れやメンタル面の不調、肥満、生活習慣病など全身に悪影響を及ぼす可能性があります。
おならを減らし、臭いを改善するのに効果的な生活習慣や食生活などをご紹介します。
ガスが多く発生する原因として「FODMAP(フォドマップ)」が注目されています。
FODMAPとは、小腸で消化吸収されにくく大腸で短時間のうちに発酵してガスを産生する糖類の総称で、下痢や膨満感など過敏性腸症候群(IBS)の症状を引き起こすとされています。
FODMAP食品は健常者にとっては腸内環境を整える作用がありますが、過敏性腸症候群の患者にとっては症状が発現するきっかけになります(※)。
FODMAP
高FODMAP食品 | |
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分類 | 代表的な食べ物 |
野菜 | ネギ、ゴボウ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス、セロリ |
乳製品 | 牛乳、ヨーグルト、プロセスチーズ |
豆系食品 | 大豆、納豆、絹ごし豆腐 |
果物 | リンゴ、スイカ、パパイヤ、プルーン、ドライフルーツ |
穀類食品 | うどん、パスタ、ラーメン、パン、シリアル、トウモロコシ |
※:鈴木秀和. "機能性消化管障害と腸内環境―腸内細菌, 食事因子, 酸, 胆汁酸から―." 日本消化器病学会雑誌 117.10 (2020): 840-855.を基に作成
過敏性腸症候群によっておならばかり出る時は、高FODMAP食品を控えるようにしましょう。
“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンは約90%が腸内で産生されますが、腸内環境が乱れると過剰に分泌され、蠕動運動に異常を生じさせます。
セロトニンの正常な分泌を促すのに効果的なのが、朝起きてすぐに太陽の光を浴びること。体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌がスタートします。
また、セロトニンは自律神経を調節する役割を果たしています。
起きる時刻や寝る時間、食事を摂るタイミングなどを毎日同じ時刻に揃えることで、体内リズムが安定してセロトニンの分泌量が安定し、自律神経が整いやすくなるでしょう。
ガスが過剰に発生している時や便秘が悪化している時は、自律神経が乱れている可能性があります。
腸の蠕動運動は、睡眠中に副交感神経が優位になることで促進されるため、質の高い睡眠をとることが大切です。
良質な眠りに大事なのは、長さよりも深さ。就寝時間の2時間程度前に入浴してリラックスし、睡眠に適した環境で眠りましょう。
体が冷えると胃腸の動きが低下し、消化不良を引き起こして腸内でガスが発生しやすくなります。
体温を上げるためには、筋肉量を増やすことが大切です。運動不足や加齢で筋肉が衰えると、基礎代謝量も低下して肥満の原因にも…。
ウォーキングやストレッチ、筋トレなど軽い運動でも毎日続ければ効果が出てきます。まずは1週間を目標に始めましょう。
※:鈴木秀和. "機能性消化管障害と腸内環境―腸内細菌, 食事因子, 酸, 胆汁酸から―." 日本消化器病学会雑誌 117.10 (2020): 840-855.
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今回は、おならがよく出る原因やすぐに出来るガス溜まりの改善法、おならを減らして臭いを改善する生活習慣、食生活などについてお伝えしました。
便秘と同様に、人前でおならが出そうになったり臭いに悩むことは健康面だけではなく精神的にも大きな影響を与えます。
おならの悩みを改善するためにも、生活習慣や食生活を一度振り返りってみませんか。