最終更新日:2025.9.10
便秘に悩む高齢者に対するビフィズス菌BB536の新たな可能性

善玉菌で便秘が改善?──高齢者を対象としたビフィズス菌BB536の研究結果とは
加齢による腸の働きの低下や筋力の衰え、薬の副作用など、さまざまな要因により「慢性的な便秘」に悩む人は多いのではないでしょうか。そんな中、腸内環境を整える手段として、近年注目されているのがプロバイオティクス、すなわちビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」です。
今回はビフィズス菌の一種「Bifidobacterium longum BB536(以下、BB536)」が高齢者の慢性便秘にどのような影響をもたらすかを検証した研究論文をご紹介します。
■ 研究の詳細
この研究は順天堂大学の竹田努准教授らのグループが、医師に「慢性便秘」と診断された高齢者(平均77.9歳)80名を対象に実施しました。参加者は、
・BB536(善玉菌)入りサプリを4週間飲むグループ(39名)
・有効成分の入っていないプラセボ(偽薬)を飲むグループ(41名)
の2つに分けられ、4週間後に便秘の改善度を比較しました。
試験は信頼性の高い「二重盲検法」で行われ、便の回数・硬さ・排便のしやすさをスコア化した「便秘スコアリングシステム」で評価されました。

BB536とはどのような菌なのか?
まず、BB536がどのようなビフィズス菌なのかご紹介します。
近年発見されたヒト由来のビフィズス菌BB536
今回、研究対象とされたビフィズス菌BB536は、健康な乳児の大腸から発見されたBifidobacterium longum(ビフィドバクテリウム・ロンガム)というヒト由来のビフィズス菌で、1969年に森永乳業株式会社(以下、森永乳業)によって発見されました。
ビフィズス菌は様々な生物の体内に生息しており、その種類30~50菌種と言われています。
その中でもヒトの腸内にすんでいるビフィズス菌は7~8菌種。代表的なものには、ビフィダム菌、ロンガム種、アドレスセンティス種、インファンティス種、ブルーベ種などの菌種があり、それぞれの菌種の中でも今回のBB536(ビフィドバクテリウム・ロンガム)のように「種」からさらに「株」へ細分化されます。菌株は同じ菌種内では共通の特徴を持つことに加え、菌株ごとに異なる特性も持っています。

BB536もこれまでの研究の中で、他のビフィズス菌に比べて酸や酸素に強く、生きて大腸に到達できることに加え、長期的に摂取することにより便秘傾向にある健常者に対し一定の整腸作用が見込まれるといった特性があり、多くの研究者により注目されてきました。
この論文においては、BB536が高齢者の中でも慢性便秘症患者において、同様の改善が見込まれるかについて言及し、研究されています。
便秘スコアリングシステムとは
「便秘スコアリングシステム」とは、便秘の症状の重さや種類、生活への影響度などを数値化(スコア化)して客観的に評価するための指標のことです。
スコア化することにより、便秘の程度を客観的に把握し、治療効果の測定や比較がしやすくなるといわれており、以下のような項目を5段階で評価しスコアリングしていきます。

BB536が便秘症状を改善する可能性が明らかに
今回の臨床試験では、BB536を摂取したグループで便秘スコアリングにおける「排便回数」や「便秘症状の重症度(CSSスコア)」など、複数の項目で改善が見られました。
特に、8週目(後観察期間)においては「排便困難」や「CSSスコア」の有意な改善が確認され、プラセボ群と比較しても「排便回数」の増加や「排便未完遂回数」の減少といった明確な差が現れています。
これらの結果は、「BB536が腸の働きを後押しし、慢性的な便秘症状を和らげる可能性がある」ことを強く示唆していると言えるでしょう。

結論
今回の研究成果は、すでに便秘が慢性化している高齢者に対しての治験で一定の効果を得られたことでBB536の健康的な便通環境への有用性を示しました。
今後、「腸から全身」への波及効果を解明する動きが加速すれば、健康寿命の延伸に大きく貢献する可能性も期待されます。
【参考資料・出典】

この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会 食品保健指導士
・管理栄養士