最終更新日:2024.11.27
コーヒーは、とても身近な飲み物です。眠気覚ましや気分転換、食後など、1日に何杯も飲むという人も多いのではないでしょうか?
コーヒーには様々な健康効果があることが知られていますが、実は便通を良くする効果もあるといわれています。その一方で、コーヒーにより便秘が悪化する場合もあります。
そこで今回は、コーヒーと便秘の関係や便通を良くするための飲み方、コーヒーで便秘が悪化する人の特徴などについて解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
コーヒーが便秘の解消に効果的な理由は、コーヒーには腸の動きを活発にしたり、腸内に善玉菌を増やしたりする作用をもつ成分が含まれているからです。
コーヒーに多く含まれるカフェインには覚醒作用があり、交感神経を刺激して身体を興奮・緊張状態にします。
コーヒーを飲むと交感神経が活発になりますが、その反動として、消化促進や腸の蠕動運動を促進する副交感神経も活性化します。
腸の蠕動運動が促されることで便が腸内を移動して、便秘解消につながるのです。
また、カフェインには胃酸の分泌を促進する作用があります。
胃酸が十分に分泌されると食べ物の消化や吸収が進み、排出しやすい適度な硬さの便が作られます。
コーヒーには、腸内でビフィズス菌などの善玉菌のエサとなる「マンノオリゴ糖(MOS)」が含まれています。
マンノオリゴ糖は胃や小腸で分解されない難消化性であるため、大腸まで到達して短鎖脂肪酸に代謝されます(※1)。
短鎖脂肪酸は、腸の蠕動運動を活発にして排便を促進するだけでなく、善玉菌や有益物質を増やして悪玉菌や有害物質の生成を抑制する作用があることが示唆されています(※2)。
コーヒーを飲むと、マンノオリゴ糖の働きによって腸内に善玉菌が増加し、腸内環境が良くなって便秘が解消されるというわけです。
※2:門利恵, et al. "ホエイパウダーおよび各種オリゴ糖が in vitro において腸内発酵に与える影響について." 帯広大谷短期大学紀要 55 (2018): 5-17.
コーヒーには便秘解消効果があるとされる一方で、「コーヒーを飲んで便秘がひどくなった」という声も少なくありません。なぜ、このような真逆の意見があるのでしょうか?
コーヒーを飲むと便秘になる原因や、コーヒーを飲むと便秘が悪化する人について解説します。
コーヒーを飲んで便秘が悪化する大きな原因が、水分不足です。
カフェインには利尿作用があるため、何杯も飲むとトイレが近くなって体内の水分が排出され過ぎてしまいます。
体内の水分量が不足すると、それを補うために便に含まれる水分が腸管で過剰に吸収され、便が硬くなります。
硬くなった便は腸内に滞留しやすくなって便秘を悪化させるだけでなく、排便時に肛門を傷つけて切れ痔を引き起こす大きな要因にもなるのです。
「過敏性腸症候群(Irritable Bowel 「過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)」は、大腸に病気の原因がないにもかかわらず、腹痛をともなう便秘や下痢などの症状が慢性的に表れる疾患です。
過敏性腸症候群の発症原因は不明ですが、精神的ストレスや緊張が発症の引き金になると考えられています。
過敏性腸症候群は食べ物や飲み物で症状が悪化する場合があり、コーヒーもその中の一つです。
ある調査では、カフェインの摂取量が多いほど過敏性腸症候群の重症度が上がることが明らかになりました(※1)。
このことから、過敏性腸症候群の人はコーヒーの摂取を控えた方が良いといえそうです。
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コーヒーの便通改善効果をさらに高める、おすすめの飲み方をご紹介します。
どの方法も手間をかけず簡単にできますので、便秘で困っている人は試してみてくださいね。
牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)には、腸内の乳酸菌やビフィズス菌によって乳酸や酢酸に代謝されて腸の蠕動運動を促進し、便通を整える作用があります。
ハチミツには、腸内でビフィズス菌や乳酸菌などのエサとなって善玉菌を増やすオリゴ糖が含まれています。
ハチミツにはビタミンやミネラル、有機酸など多くの栄養素が含まれているので、疲労回復にも効果的です。
※ハチミツは1歳未満の乳児には与えないでください。
シナモンには、血行を促進して体を温め、胃腸の働きを良くする効果があります。
お腹が冷えると便秘になりやすいため、冷え性の人はできるだけ体を温めるようにしましょう。
ただし、シナモンには過剰に摂取すると肝臓に負担をかけるクマリンという成分が入っています。
摂取する際は、クマリンがほとんど含まれていない「セイロンシナモン」を選んでください。
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コーヒーを飲む時間帯で、便秘解消・予防効果に違いがあります。
腸内環境を整えるのに最適なタイミングで、コーヒーを飲みましょう!
朝にコーヒーを飲むなら、朝食後の午前9時~10時頃が理想的です。
その理由は、コルチゾールという抗ストレスホルモンの分泌と関係しています。
コルチゾールの分泌量は起床直後からだんだん上昇し、目覚めてから約40分後、濃度がピークに達します(※)。
しかし、目覚めてすぐにコーヒーを飲むとコーヒーのカフェインがコルチゾールの分泌量を低下させる可能性が高いのです。
起床後、コルチゾールが分泌されないとすっきり覚醒できず、だるさや疲労感を覚える原因に。体内時計も乱れて、排便ペースが狂う要因となります。
カフェインには胃酸の分泌を促進し、食べ物の消化・吸収を促進する作用があります。
昼食後に飲むことで食べ物のスムーズな消化を助けて、便秘改善効果をもたらしてくれるでしょう。
目覚めてすぐは空腹状態で、カフェインを吸収しやすい時間帯です。
そのタイミングでコーヒーを飲むとカフェインが過剰に吸収されて、胃腸に大きな負担がかかります。
夕方以降にカフェインを摂取すると寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりして睡眠の質が低下する原因となります。
睡眠と腸内環境には深い関係性があり、眠りの質が低下すると腸内環境が悪化。便秘しやすくなります。
腸活のためには、夕方以降はコーヒーの摂取は控えましょう。
※:大平雅子, 須栗一路, and 野村収作. "唾液中 Cortisol, sIgA, α-amylase 濃度の睡眠時変化特性." 生体医工学 49.6 (2011): 798-804.
今回は、コーヒーの便秘解消効果や腸内環境を整えるための効果的な飲み方などについてお伝えしました。
コーヒーによる腸活で大切なのは、適量を適切な時間帯に飲むことです。
コーヒーの飲みすぎはカフェインの過剰摂取を招き、交感神経を刺激して興奮状態を持続させ、イライラ感を強くしたり、不眠を招いたりします。
コーヒーの摂取量は、1日あたり2杯~5杯が適量といわれています。
腸内環境に良いタイミングで飲んで、便秘をすっきり解消しましょう!