最終更新日:2024.3.1
便秘になる原因には色々ありますが、寝不足も便通を悪くする大きな要因です。便秘と睡眠には深い関係性があり、さらには全身の免疫力にも影響を与えます。
そこで今回は、管理栄養士としての知識を織り交ぜながら、便秘と寝不足の関係や睡眠不足でも便秘を即効で解消するための方法などについて、詳しくお伝えします。
便秘と寝不足は、QOLを低下させる代表的な要因です。スッキリしたおなかと熟睡した満足感が得られる快適な毎日を送るためのヒントにしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
便秘と寝不足。一見、何の関係もなさそうに思えますが、実は便通状態と睡眠には密接な関係があることが研究によって分かりつつあります。
大学生38名を対象として排便と睡眠健康に関するアンケート調査を実施したところ、便秘傾向にある人は31.3%が「睡眠時間が5時間未満」の短時間と回答。一方、便秘ではない人たちは9.1%と少数でした。
また、理想的な睡眠時間とされる7~8時間の睡眠をとっているのは便秘傾向群で6.3%、非便秘傾向群群は22.7%という結果が明らかになりました(※1)。
別の調査でも、便通状態に問題がある人は睡眠の質も悪い傾向にあることが示唆されています。
調査は、便通状態と睡眠健康の関係について東京圏在住の20歳~45歳の女性988名を対象に実施されました。
その結果、女性や高齢者に多いとされる「機能性便秘(FC)」の群は睡眠健康危険度が高くなる傾向が認められ、さらに過敏性腸症候群(IBS)の人は睡眠の質だけでなく睡眠の量も悪化している可能性が高いことが指摘されています(※2)。
調査では、機能性便秘の群は就寝時刻や睡眠時間、睡眠習慣の不規則性が有意に高いことも分かりました。
また、過敏性腸症候群の異常な消化管運動状態が、不眠の原因になっているという報告もあります(※3)。
これらの調査結果からも、便通状態と睡眠健康は相互に作用しあっている可能性が高いと言えるでしょう。
※1:木村孝子. "[実践論文] 青年期の排便状況に関連する要因." 東海学院大学紀要 10 (2016): 107-111.
※2,3:小野茂之, et al. "東京圏の成人女性を対象とした便通状態と睡眠健康に関する疫学的調査." 女性心身医学 10.2 (2005): 67-75.
睡眠と便秘の両方に深く関わっているのが、自律神経です。
自律神経は、自分の意志とは関係なく体内の機能をコントロールする神経系で、おもに日中に働く「交感神経」と夕方から夜にかけて優位になる「副交感神経」の2つがあります。
このうち、スムーズな便通を促進するのが副交感神経です。
睡眠中やリラックスしている間、副交感神経の働きによって腸管が適度に収縮すると、大腸内の便が押し出されて排便に至ります。
しかし、何らかの理由で自律神経がバランスをくずしていると交感神経が優位な状態が続き、本来は睡眠中に促進されるはずの大腸のぜん動が行われず、便秘が引き起こされるのです(※)。
自律神経は睡眠にも大きな影響を与えています。
副交感神経には眠気を促進する作用があり、日中の交感神経が優位な状態から副交感神経へと切り替わることで、寝つきが良くなり深く眠れるようになります。
しかし、ストレスや不規則な生活習慣による体内リズムの乱れなどが原因で夜になっても交感神経が優位な状態が続くと、寝つけない・眠りが浅いといった不眠症状が表れます。
そうすると睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりして便秘が解消できず、便秘による不快感によってますます眠れなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
便秘解消や睡眠の質を向上させるためには、自律神経を整えることが重要課題であると言ええうでしょう。
※:東野英明. "自律神経異常に起因する疾病とその対策." 日本良導絡自律神経学会雑誌 51.3 (2006): 94-104.
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正常な便通と快眠のためには、生活習慣の改善や食生活の見直しなどで自律神経を整えることが大切です。
しかし、今日明日ですぐにバランスが整うわけではありません。そこで、即効性が期待できる便秘解消法をご紹介します。
便秘解消には、適度な運動が効果的です。身体を動かすことで血行が良くなり、腸の働きも良くなります。
また、ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い有酸素運動には、副交感神経の働きを高める働きも。特に、お腹をねじる動きは腸管を刺激して自律神経のバランスを整え、腸管運動を促進します。
お腹ねじり運動のやり方
⇒③と④を10往復程度繰り返す。
※肩や腰に痛みを感じた場合はやめましょう
お腹を膨らませたりへこませたりする腹式呼吸をすると、横隔膜が大きく動きます。横隔膜が動くと腸が刺激され、排便を促進します。また、横隔膜には自律神経も集まっているため、深い呼吸によって大きく動かすことで副交感神経が優位になり、リラックス効果も得られます。さらに、便を押し出すために必要な腹筋力も鍛えられるでしょう。
便秘解消におすすめの腹式呼吸法のやり方
⇒これを10回程度繰り返す。
今回は、便秘と寝不足の関係についてお届けしました。便秘と寝不足は互いに影響を与え合っているため、両方を正常な状態にすることが必要です。そのためには、腸内環境の改善も欠かせません。
ヒトの腸内には1000種、100兆個を超える腸内細菌が存在し、免疫細胞との間に複雑な相互作用が存在していることが分かっています(※)。
腸内環境を整えることで、免疫力の向上が期待できると言えそうです。
自律神経を整える生活習慣の実践や、腸内環境を良くする食べ物・サプリの摂取で便秘を解消すれば、睡眠の質も高くなって免疫力アップにつながり、健康で快適な毎日を送れるようになるでしょう。
早速、今日から始めてみませんか。
※:種本俊, 筋野智久, and 金井隆典. "腸内細菌叢と免疫の関わり." 日本臨床免疫学会会誌 40.6 (2017): 408-415.
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