最終更新日:2024.9.17
便秘や下痢の症状は、日常で起こりやすい身体のトラブルです。
人によっては、便秘と下痢を繰り返すこともあるでしょう。
また、便秘が数日間続いた後で急に下痢になった経験がある人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、便秘と下痢が繰り返す原因や対処法、便秘と下痢を予防するための生活習慣、腸内環境を整えるための食生活などについて解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
便秘と下痢はありふれた症状であり、市販薬の服用で治ることがほとんどです。
そもそも、何日以上便が出ないと「便秘」なのでしょうか?
「慢性便秘症診療ガイドライン2017」において、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
実は、便秘には「●日以上出ない場合が便秘」といった具体的な数値はありません。
個人差が大きいため、たとえ毎日排便していたとしても、便が残っている感じがして「出た」という実感がなければ、便秘といえます。
逆に毎日出なくても、排便時にスッキリして満足感が高ければ、便秘ではないと考えられるでしょう。
下痢は「日に3回以上の軟便か水様便」と定義され、急性下痢症と慢性下痢症があります。
急性下痢症の大半はウイルス性下痢症です。
慢性下痢症にはがんや栄養障害などを起こす疾患が含まれることがありますが、緊急性が高い疾患は稀とされています(※)。
※:佐藤健太. "下痢・便秘症 Ⅰ 下痢." 日本プライマリ・ケア連合学会誌 35.1 (2012): 56-61.
便秘と下痢を繰り返す場合に、まず考えられる原因が「過敏性腸症候群」です。
器質的な疾患がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感とともに便通異常が関連して表れる機能性消化管障害の一つです。
①便秘型
②下痢型
③混合型
④分類不能型
の4タイプに分類されます。
便秘と下痢を繰り返す場合、過敏性腸症候群の混合型である可能性が考えられます(※)。
過敏性腸症候群が原因で便秘と下痢を繰り返す場合、まず「痙攣性便秘」によって腸が過緊張状態となり、細かく分断された便が腸内に停滞します。
腸内に停滞した便は腸管によって水分を奪われ、兎の糞のように硬くコロコロとした便に変化。いきんでも出ない、出たとしても少ししか出ない排出困難な状態になるのです。
痙攣性便秘でS字結腸に詰まっていた硬い便が排出されると、その奥にあった柔らかい泥状の便が出てくる場合があります。
それが、痙攣性便秘の後に起こる下痢であると考えられるでしょう。
※1,2:伊藤雅隆, イトウマサタカ, and 武藤崇. 過敏性腸症候群に対する認知・行動療法の展望. Diss. Doshisha University, 2015.
便秘と下痢を繰り返す症状がある疾患は、過敏性腸症候群だけではありません。
便秘と下痢が交互に起こる場合に考えられる、代表的な病気を挙げていきます。
大腸がんは、加齢とともに罹患率が上昇する疾患です。初期症状として、便秘と下痢が繰り返し起こることがあります。
大腸内にがんができたことで便が腸内を移動できず便秘となり、がんで腸管が狭くなるために便が細くなって、下痢になります。
大腸ポリープは、大腸内にできたイボのようなものです。
大腸ポリープによって腸内にある便がスムーズに移動できなくなり、便秘が引き起こされます。
また、腸内が狭くなることで便が細くなり、下痢をしているように感じることもあるでしょう。
潰瘍性大腸炎は原因不明の炎症性腸疾患であり、国の指定難病です。罹患者は30歳以下の成人が多く、長期間の医学管理が必要です。
大腸や直腸の粘膜にただれ(びらん)や潰瘍を形成し、下痢や血便といった症状を引き起こします。炎症を繰り返すうちに腸管狭窄が起こって便秘になる場合も少なくありません。
糖尿病には様々な合併症があり、その中には便秘や下痢も含まれています。
糖尿病にかかると、自律神経が乱れて腸の感覚障害や運動障害が引き起こされることがあります。
その結果、便秘や下痢、腹痛を繰り返すようになるのです(※)。
クローン病は、厚生労働省から難病指定を受けている炎症性疾患です。
小腸や大腸などの消化管全域に炎症が起こり、ただれ(びらん)や潰瘍が生じます。
主な症状は下痢や血便、体重減少、貧血、全身倦怠感などです。
また、腸の狭窄によって便秘が引き起こされる場合があります。
※有村愛子, 出口尚寿, and 西尾善彦. "6. 糖尿病合併症としての消化管~ 糖尿病性胃麻痺, 便秘・下痢." 糖尿病 61.3 (2018): 114-116.
便秘や下痢を繰り返さないようにするためには、腸内環境を整えることが大切です。
そこで、便秘や下痢の改善や予防に効果的な生活習慣や食生活を紹介します。
無理なく実践できることから始めてみませんか。
自律神経は全身の様々な機能を調節し、消化機能も例外ではありません。自律神経が乱れると便秘や下痢をしやすくなります。
自律神経を整えるポイントは、規則正しい毎日を送ることです。
起床・就寝、食事、入浴などのタイミングを毎日同じ時間に合わせると、自律神経が整いやすくなります。
スムーズなお通じにつながる腸の蠕動運動は、睡眠中に副交感神経が優位に働くことによって促進されます。
そのため、睡眠時間が足りなかったり睡眠の質が低下したりすると、蠕動運動が鈍化して便秘を引き起こすのです。
また、胃腸の働きが悪くなることで便の水分が腸に吸収されず、下痢をする原因になります。
過敏性腸症候群の発症原因には、ストレスが深く関連していると考えられています。
さらに、ストレスがたまると腸内細菌のうち悪玉菌が増加し、逆に善玉菌が減少することが分かっています(※1)。
また、ストレスの蓄積は自律神経のバランスが崩れる原因の一つです。
手軽なストレス解消法としておすすめなのが、アロマの香りを嗅ぐ方法です。
日中であれば、ポジティブな気分なれるオレンジ・スイート、睡眠前ならリラックス効果が高いラベンダーという風に、時間や場所に応じて何種類か用意しておくと良いでしょう。
たとえ短時間でも、適度な運動を毎日続けることが腸の健康を保つのに効果的です。
朝のウオーキングは、起きてすぐに太陽の光を浴びることで“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの生成が促進され、自律神経を整える作用が期待できます。
アルコールを飲み過ぎると、腸の蠕動運動や浸透圧への感受性を高めるために下痢と吸収不良を起こしやすくなります。(※2)。
また、アルコールを摂取すると、ビタミンB群に含まれる水溶性ビタミンの一つである葉酸の欠乏を招きやすくなります。
葉酸が不足すると、大腸がんのリスクが上昇(※3)。便秘と下痢を繰り返す原因となります。
※1:川野直子, et al. "ストレスレベル別便秘傾向者に対する発酵乳の飲用効果." 栄養学雑誌 70.1 (2012): 3-16.
※2,3:横山顕. "アルコールと消化管疾患―消化管がんを中心に―." 日本消化器病学会雑誌 109.9 (2012): 1518-1525.
今回は、便秘と下痢が繰り返し起こる原因や腸内環境を整える生活習慣などについて解説しました。
便秘や下痢を繰り返したり、便秘から急に下痢になったりする原因には、ストレスや生活習慣の乱れ、偏った食生活などによって腸内環境が乱れている可能性が考えられます。
手軽に腸内環境を整える方法として、善玉菌であるビフィズス菌や、ビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖などが配合されたサプリメントを飲むのもおすすめです。
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もしも頻繁に便秘と下痢が繰り返し起こる場合は、重篤な病気が隠れている可能性も考えられます。
その場合は自己判断で市販薬を服用するのはやめて、早めに専門医の診察を受けましょう。