最終更新日:2024.3.7
眠気覚ましや気分転換、食後のリラックスタイムなど、日常で飲む機会が多いコーヒー。
2型糖尿病や心血管疾患、肝臓がんの予防をはじめとした様々な健康効果があるだけでなく、便秘改善にも役立つとされています。
しかし、その一方でコーヒーを飲むと便秘が悪化するという情報もあり、どちらが正しいのか分からず迷ってしまう人も多いでしょう。
そこで今回は、コーヒーの便秘解消効果やコーヒーで便秘が悪化する人の特徴、便通改善に効果的なコーヒーの飲み方などを解説します。
コーヒーを上手に活用して、快適なお通じを目指しましょう!
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
目次
コーヒー独特の香りには、リラックス作用と抗ストレス作用があることが分かっています。
コーヒーには2000種類を超える成分が含まれ、その中には疾患リスク軽減に寄与すると考えられているカフェインやクロロゲン酸、ニコチン酸なども入っています(※1)。
それでは、コーヒーが便秘解消に効果をもたらす理由を挙げてみましょう。
コーヒーといえば、カフェインが多い飲み物の代表格。カフェインには、主に交感神経を刺激して身体を興奮・緊張状態にする作用があります。
コーヒーをはじめとしたカフェインを含む飲み物や食べ物が、眠気覚ましに効果的なのはそういったカフェインの作用によるものです。
その一方で、交感神経の活性化に対する反動として副交感神経も活発化。副交感神経は消化を助け、腸の蠕動運動を促進します。
カフェイン摂取後の自律神経活動の変化について調査した研究で、カフェインを添加したコーヒーと非添加のコーヒーを摂取した群を比較したところ、カフェインを添加した群では有意な副交感神経の亢進が見られたことが報告されました(※2)。
また、コーヒー(カフェイン)摂取が循環器・消化器系機能に及ぼす影響について、99名を対象に行った調査では、29%がコーヒー摂取によって蠕動運動が亢進したことが明らかになっています(※3)。
コーヒーには、腸内でビフィズス菌などの善玉菌のエサとなる「マンノオリゴ糖(MOS)」が含まれています。
マンノオリゴ糖は胃や小腸で分解されない難消化性で、大腸まで到達して短鎖脂肪酸に代謝されます(※4)。
腸内細菌を用いた試験において、コーヒーを飲むとコーヒー豆由来のマンノオリゴ糖によって善玉菌が増殖した一方で、悪玉菌にはほとんど利用されませんでした。
そのため、コーヒーを摂取することで腸内フローラが改善され、便秘解消につながると考えられます(※5)。
カフェインには胃酸の分泌を促進する作用があります。
胃酸が少ないと食べ物の消化や吸収が進まず、未消化の食べ物が腸へと移動して便秘を引き起こす要因に。
コーヒーを飲むと胃酸の分泌量が増加し、消化機能が向上して快適なお通じが期待できるでしょう。
※1:岡希太郎. "コーヒー飲用による疾患予防の薬理学." ニューフードインダストリー 55.10 (2013): 1-8.
※3:栗原久, and クリバラヒサシ. "コーヒー/カフェイン摂取と日常生活-循環器・消化器系機能に及ぼす影響評価." 東京福祉大学・大学院紀要 8.2 (2018): 101-111.
※5:浅野一朗, et al. "コーヒーマンナン由来マンノオリゴ糖の腸内細菌資化性." 日本農芸化学会誌 75.10 (2001): 1077-1083.
コーヒーを飲むと便秘が改善する人がいる一方で、コーヒーの摂取によって便秘が悪化したり、大腸にガスが溜まったりする人もいます。
なぜ、人によってコーヒーの効果が違うのでしょうか?コーヒーの摂取を控えた方が良い人について、理由とともに解説します。
「過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)」は、大腸に病気の原因がないにもかかわらず、腹痛をともなう便秘や下痢などの症状が慢性的に表れる疾患です。
過敏性腸症候群の発症原因は不明ですが、精神的ストレスや緊張が発症の引き金になると考えられています。
また、過敏性腸症候群は食べ物によって症状が悪化する場合があり、コーヒーもその中の一つです。
イランで成人3362名を対象にコーヒーとカフェインの摂取量と過敏性腸症候群の関連性について調査したところ、コーヒーを頻繁に摂取する人は、コーヒーを全く飲まない人よりも過敏性腸症候群になる確率が高いことが分かりました。
さらに、カフェインの摂取量が多いほど、過敏性腸症候群の重症度が上がることも明らかになっています(※1)。
また、ある調査では過敏性腸症候群の患者330名に対して、食べ物と消化管症状の関連についてアンケートを実施。
その結果、コーヒーやアルコール、辛いスパイス、炭水化物を摂取すると頻繁に腸内にガスが発生する、腹痛が引き起こされるなどの症状が表れることが分かりました(※2)。
カフェインの作用の一つに、利尿作用があります。そのため、水分の摂取量が少ない人は、コーヒーを飲むことでさらに体内の水分量が低下する恐れも。
体内の水分が足りないと、便に含まれる水分が腸によって過剰に吸収され、カチコチの硬い便になります。
硬くなった便は排出が難しいため、便秘の悪化や切れ痔を引き起こす大きな要因となるのです。
水分の摂取量が足りない傾向にあるのが、高齢者です。加齢とともに知覚が低下することで喉の渇きを感じにくくなり、水分不足に陥っている場合が少なくありません。
それでなくとも、高齢になるほど筋力の低下や腸内環境の悪化によって便秘の症状に悩まされる人は増加。
高齢の人が1日に何杯もコーヒーを飲むと水分不足で便が硬くなり、さらに酷い便秘を引き起こしかねません。
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多くの人にとってコーヒーを飲むことが快適なお通じにつながることが分かったところで、便秘改善効果をさらに高める飲み方をご紹介します。
ほんのひと工夫で、腸に嬉しい効果が期待できますよ。
身近な香辛料の一つであり、お菓子作りに利用されることが多いシナモン。
シナモンには血行を促進して胃腸を整える効果があり、古くから民間療法で使われてきました。
コーヒーに市販のシナモンパウダーを一振りするだけで、便秘解消の効果が得られる可能性が高くなるでしょう。
牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)は、腸内の乳酸菌やビフィズス菌によって乳酸や酢酸に代謝され、腸の蠕動運動を促進して便通を整えます。
コーヒーの苦味が苦手な人は、牛乳を加えるとまろやかな味わいになって飲みやすくなりますよ。
コーヒーに甘みを加える場合は、砂糖ではなくハチミツにしませんか。ハチミツには糖類のほかに、ビタミンやミネラル、有機酸など多くの栄養素が含まれています。
中でも、有機酸のオリゴ糖は、腸内でビフィズス菌や乳酸菌などのエサとなって善玉菌を増やし、悪玉菌の増加を抑制して腸内環境を整える作用があるとされています(※1)。
高齢者を対象に、ハチミツの摂取と便通の関連性について調査したところ、ハチミツを摂取した群は排便回数が増加しただけでなく、便の形状も硬い便から排出しやすい普通便へと変化したことが明らかになりました(※2)。
ただし、ハチミツは1歳未満の乳児に与えてはいけません。誤って口に入らないように注意しましょう。
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目覚めてすぐは空腹状態で、カフェインを吸収しやすい時間帯です。コーヒーを飲むとカフェインが過剰に吸収されて、胃腸に大きな負担がかかります。
コーヒーを飲むなら、朝食後がおすすめです。日中にコーヒーを飲む場合も、空腹時を避けて飲みましょう。
人間に必要な水分量は1日あたり1.5~2ℓです。その多くをコーヒーで補うと、カフェイン過剰になって健康上の問題が生じます。
コーヒーによる健康効果を期待するなら、1日あたり2杯~5杯が適量とされています。
コーヒーには利尿作用があるため、便秘気味の人は便が硬くなるのを防ぐためにも積極的に水分を摂取しましょう。
夕方以降にカフェインを摂取すると寝つきが悪くなり、睡眠の質が低下する原因となります。睡眠の質が低下すると自律神経が乱れて、便秘の原因に。
ある調査では、就寝前6時間以内のカフェイン摂取は睡眠に悪影響を及ぼすと考えられています(※3)。
良質な睡眠で便秘を解消・予防するためにも、夕方以降にコーヒーを飲むのは控えましょう。
※1,2:松戸典文, and マツドノリブミ. "蜂蜜摂取による高齢者の便秘改善の効果." (2018): 83-91.
※3:栗原久, and クリバラヒサシ. "日常生活の中におけるカフェイン摂取-カフェインの精神運動刺激作用と行動遂行." 東京福祉大学・大学院紀要 7.1 (2016): 5-17.
今回は、コーヒーの便秘改善効果などについてお伝えしました。
コーヒーには便秘解消以外にも、様々な疾患の発症リスクを低下させる可能性があることが報告されています。
しかし、いくら健康に良いからと言ってコーヒーを飲みすぎると、カフェインの過剰摂取となり逆に健康を損なうことになりかねません。
カフェインの摂取量が多いと精神的緊張が高くなり、不安感やイライラ感が強くなります。
また、寝つきの悪さや浅い眠りといった不眠症状によって腸の正常な動きを妨げて便秘になる危険性もあります。
1日あたり2杯~5杯の適量を飲んで、便秘と無縁の毎日を目指しましょう。