最終更新日:2024.11.25
便意を感じてトイレに行っても便が出ない、あるいは便が少ししか出ない症状が何回も繰り返し起こることを「しぶり腹」といいます。
しぶり腹は、残便感や腹痛といった不快な症状を伴うことが多く、QOLの低下につながる場合が少なくありません。
そこで今回は、しぶり腹になる原因や腸関連の疾患との関係、しぶり腹の対処法などについて解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
しぶり腹は、便意を感じてトイレに行っても便が出ない、または少ししか便が出ないことが何度も起こる状態です。
便意があるのに少ししか出ないため残便感を感じたり、下腹部の痛みを伴うケースもあります。
しぶり腹は英語では「テネスムス」、正式には「直腸テネスムス」と呼ばれ、痛みを伴う強い尿意や残尿感を伴う症状の「膀胱テネスムス(尿しぶり)」と区別されていますが、「テネスムス」のみでしぶり腹のことを指すケースが多いです。
また、東洋医学では「裏急後重(りきゅうこうじゅう)」とも呼ばれています。
便秘は、腸内に便が滞留してスムーズに排便できない状態です。
便秘の種類によっては、便意を感じないこともあります。
一方で便意を感じるのに少ししか出ないしぶり腹の場合、際には腸内に便が溜まっていない場合がほとんどです。
実際には便が溜まっていないにもかかわらず便意を感じるのは、大腸にできた潰瘍・炎症などによる痛みや、直腸への刺激を便意と勘違いするためです。
便意を感じてトイレへ行っても、実際には腸内に便が溜まっていないため、排便できません。
しぶり腹の原因となる代表的な疾患
しぶり腹を引き起こす要因として、近年注目を集めているのが「過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)」です。
過敏性腸症候群は、大腸の狭窄など器質的な問題がないにもかかわらず、腹痛を伴う下痢や便秘、腹部膨満、ガスの過剰発生といった症状が繰り返し表れる疾患です。
表れる症状によって4タイプに分類されます。
過敏性腸症候群の分類
過敏性腸症候群になる明確な原因は分かっていませんが、ストレスや抑うつなどの精神的要因やホルモンの乱れ、食生活などによる腸内環境の悪化が深く関連していると考えられています。
しぶり腹は、便秘型と下痢型の両方で起こります。
しぶり腹は、大腸内にできた潰瘍や炎症のサインとなっている可能性があります。
医療的な治療が必要となるため、便意があるのに出ない症状が続いている場合は一度専門医に相談することをおすすめします。
また医師の診断の結果、過敏性腸症候群が原因となっている場合も薬物治療などが行われますが、併せて生活習慣や食生活の見直しによる腸内環境の改善も指導されるケースが主です。
腸内環境を整えるのに効果的な、生活習慣と食生活を紹介します。
寝つきが悪い、眠りが浅いなど睡眠の質が低下すると、自律神経が乱れやすくなります。
自律神経が乱れると、腸内環境が悪化。便秘や過敏性腸症候群を引き起こす要因になります。
便秘解消・予防に欠かせない栄養素といえば、食物繊維です。
食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。
水溶性溶性食物繊維には便を柔らかくして排出しやすくする作用、不溶性食物繊維には便の量を増やして腸の蠕動運動を促進する作用があります(※)。
しかし、便秘が続いている時や過敏性腸症候群の人は、不溶性食物繊維の摂りすぎには注意が必要です。
不溶性食物繊維によって腸内にガスが大量発生して腹部膨満を引き起こしたり、便の量が増えて排出が困難になったりする可能性があります。
ビフィズス菌などの善玉菌を含んだ腸内環境を整える食品を食べるのとともに、便を柔らかくし善玉菌のエサにもなる水溶性食物繊維を優先して摂るようにしましょう。
忙しい毎日の中で、腸活に効果的な生活習慣や食生活を続けるのは容易ではありません。
そこでおすすめなのが、サプリメントの活用です。
腸内環境を良くするビフィズス菌や、ビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖などが配合された腸活サプリを毎日の暮らしに取り入れて、手間をかけずに腸内環境を整えましょう。
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※:高橋陽子. "繊維質と食物繊維." 日本食品科学工学会誌 58.4 (2011): 186-186.
今回は、便意を感じてトイレに行っても便が出ない、または少ししか出ない「しぶり腹」の原因や対処法を解説しました。
しぶり腹の原因となる過敏性腸症候群などの改善や予防のためにも、日々の生活習慣や食生活で腸内環境を整えることは大切です。
しかし、すでにしぶり腹の症状が続いていたり、腹部に強い痛みや膨満感といった普段とは異なる症状がある時は、まずは専門医や医療機関へ相談するようにしましょう。