最終更新日:2024.8.26
便意を感じてトイレに行ってもなかなか出なかったり、硬いコロコロの便が少し出るだけだったりしてスッキリできなかった経験がある人も多いのではないでしょうか?
今回は、便秘の中でも「出そうで出ない」、出口で詰まる便に注目して、便が出口で詰まる理由や対処法、便が出口に詰まるのを予防する方法などについて解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
トイレでいきんでも便が出ない、出口のすぐ前まで来ている気がするのに便が出ない…。
便が出口で詰まる原因は何でしょうか?便の詰まりを引き起こす主な原因を挙げていきます。
腸内環境の悪化や自律神経の乱れなどによって腸の機能が低下すると、蠕動運動が鈍くなり、便が腸内をスムーズに移動できなくなります。
腸内に停滞した便からは水分が過剰に吸収され、カチコチの硬い便に。
コロコロとした兎の糞のような形になり、排出しにくくなります。
便を出す時には、腹圧を上昇させる「いきみ」が必要です。
しかし、腹筋の筋力が弱い女性や筋力が低下している高齢者は、排便に必要なだけの「いきみ力」が足りず、便が出口で詰まってしまうことが少なくありません。
便意を我慢することが多かったり、下剤や浣腸を頻繁に使ったりすることで排便反射が低下して起こる便秘を「直腸性便秘」と呼びます。
直腸性便秘の場合、出口で便が詰まることが多いとされています。
直腸性便秘では排便反射が正常に機能しないため、便が肛門近くまで来ても便意が起こらず、気付かない間に便秘が悪化することがあります。
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日本人にとって理想的な排便スタイルは、和式トイレにしゃがんだ姿勢です。
しかし現代の日本では、自宅でも出先でも主流は洋式トイレ。
それこそが、日本人に便秘の人が増えた大きな要因の一つです。
欧米人の場合、肛門と直腸の角度である「肛門直腸角」は比較的緩やかで、洋式便座に普通に座っていても排便に支障はありません。
しかし、日本人の肛門直腸角は折れ曲がりが強く鋭角であるため、洋式便座にただ座っただけでは排便しにくいのです。
そこでおすすめなのが、ロダンの「考える人」のポーズ。
上半身は肘を膝につける前かがみ姿勢をとり、足元には台を置いて膝の位置を高くすると直腸肛門角が緩やかになるため、腸内を便が移動しやすくなります。
便が出口で詰まっている気がする人は、「考える人」のポーズで便座に腰かけてみましょう。
出口に便が詰まらないようにするためには、排出しやすい便の硬さを保ち、腸内環境を改善することが重要です。
また、自律神経を整えることも便秘解消においては大切な要素です。
便を腸から出口へと押し出す「蠕動(ぜんどう)運動」は、リラックスし身体を休めている時に働く「副交感神経」が優位になると活発になり、逆に活動・興奮状態の時に働く「交感神経」が優位なタイミングでは停滞します。
そのため、自律神経のバランスが乱れると蠕動運動が十分に行われなくなり、便秘につながるのです。
毎日少しでも排便できるようになれば、直腸の拡大やさらなる便の硬化を予防できます。
便秘の解消・予防のために実践したい生活習慣をご紹介します。
目覚めてすぐに光を浴びると、全身の細胞の時計遺伝子が活性化して体内時計がリセットされ、活動モードになります。
“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの分泌もスタート。
セロトニンは自律神経の調節にも関係しているため、十分な分泌を促すことが大切です。
また、セロトニンは“睡眠ホルモン”であるメラトニンの原料でもあります。
日中にセロトニンが正常に分泌されるとメラトニンの量も多くなり、睡眠の質を高める効果が期待できるでしょう。
朝食は、自律神経を切り替えるスイッチのような役割を果たします。
セロトニンの原料となる物質・トリプトファンを含んだバナナや納豆、豆腐、ヨーグルトなどを積極的に摂るようにしましょう。
水溶性食物繊維が多く含まれた食材も便秘改善・予防には効果的です。
体内の水分が不足すると、腸内の便が固くなり排出されにくくなります。
便秘を防ぐために、1日に1.5~2リットルの水分を摂ることを心がけましょう。
便秘の解消・予防に効果的な食物繊維。便が固くなって詰まる便秘の場合は、便を柔らかくする作用がある「水溶性食物繊維」を摂取するのが効果的です。
水溶性食物繊維はワカメなどの海藻類やキウイ、納豆などに多く含まれます。
ビフィズス菌は腸内で悪玉菌の増殖を抑える「酢酸」を作り出し、腸内環境の改善に役立ちます。
ヨーグルトを選ぶ際は乳酸菌だけではなく、ビフィズス菌が入ったものを選びましょう。
遅くとも就寝2時間前に夕食を済ませておくことで、睡眠中に抗ストレスホルモンである成長ホルモンの正常な分泌が促進されます。
就寝2時間程度前にぬるいお湯に浸かることで副交感神経が優位になり、寝つきが良くなります。
寝つきが良くなると睡眠の質が高くなり、腸内環境も整いやすくなります。
運動不足は自律神経機能を低下させますが、習慣的に運動を行なうことで機能が回復することが分かっています。
ある小学校の全児童305名を対象として1年間の運動介入を行った結果、介入前に自律神経活動が低下していた児童は、有意な改善が認められました。
また、習慣的な運動が自律神経活動の低下に起因する肥満やうつの発症などの予防につながる可能性があると考えられています(※)。
朝起きる時間や寝る時間、食事のタイミングなど毎日を同じタイムスケジュールで過ごすことで、体内時計が整って自律神経のバランスも良くなります。
また、直腸性便秘の人は、便意がなくても毎日同じタイミングでトイレに行くことが大切。
決まった時間にトイレへ行くことで、排便を習慣化できるようになるでしょう。
※:森谷敏夫. "自律神経機能と運動 (シンポジウム 2 「自律神経」,特集 第43回日本女性心身医学会学術集会報告)." 女性心身医学 19.3 (2015): 271-277.
今回は、出口で便が詰まる原因や対処方法、便の詰まりを防ぐのに効果的な自律神経の整え方などについて解説しました。
健康寿命と腸内環境は密接な関係があります。健康寿命を延ばすためにも、腸内環境を整えることが大切です。
腸内環境の改善には、生活習慣や食生活の見直しが重要課題です。
また、手軽に腸内環境を良くする方法として、腸内に善玉菌を増やす作用があるビフィズス菌やオリゴ糖などを含んだサプリを摂るのもおすすめです。
おなかをスッキリさせて、快適な毎日を送りましょう!
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