最終更新日:2024.8.19
便秘は誰にでも起こり得るありふれた症状であるがゆえに、軽く見られがちです。
便秘が続くとお腹が張ったり、おならの回数が増えたり、食欲が低下したりと様々な影響が表れます。
人によっては38度以上の高熱を出す場合もあり、「たかが便秘」と軽く考えて放置していると、思わぬ重篤な事態を招きかねません。
そこで今回は、便秘で発熱する理由や、便秘と風邪、ストレスと発熱・便秘についての関係などについて解説します。
長引く便秘で体調不良や不快感に悩まされている人は、症状改善の参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
食品保健指導士・管理栄養士
古本 楓
食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、「便秘」「腸活」についての情報をお届けいたします。
【資格】
・公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
食品保健指導士
・管理栄養士
発熱は、風邪をはじめとした感染症の代表的な症状であり、普段よりも体温が高い状態を指します。
日本の感染症法では「37.5度以上を発熱、38度以上は高熱」と定義されていますが、人によって平熱が異なるため、平熱が低い人はたとえ37.4度以下であっても発熱状態にあると考えられるでしょう。
便秘が続いた際に、熱が出たことがある人もいるのではないでしょうか?
一見、便秘と発熱には何の関連性もなさそうに思えます。
しかし、ある病院に入院している65歳以上の人34名を対象に調べたところ、便秘は体温を上昇させ、排便によって体温が低下することが明らかになりました(※1)。
便秘で熱が出る理由として、便秘が続くと腸内環境が悪化して悪玉菌が増加することが挙げられます。
腸内環境と免疫力には深い関係があるため、腸内環境が悪くなることで免疫力が低下し、風邪やインフルエンザなどに感染しやすくなり、発熱を引き起こすと考えられるでしょう。
近年、腸内環境を整えるために欠かせない存在として注目を集めている「プロバイオティクス」。
プロバイオティクスは腸内常在菌のバランスを整え、宿主に有益な作用をもたらす微生物です。
代表的なプロバイオティクスに、乳酸菌とビフィズス菌があります。
ある調査では、乳酸菌を摂取している高齢者はインフルエンザや風邪症状が減少したことが分かりました。
また、乳酸菌を与えたマウスにインフルエンザを感染させると、致死率が減少したという研究結果も報告されています。
プロバイオティクスは、腸管だけでなく呼吸器系にも良い効果を与えることが期待されているのです(※2)。
発熱を引き起こす主な要因はウイルスや細菌による感染症ですが、実はストレスの蓄積も発熱の要因になることが分かっています。
ストレスによって体温が上がることを「ストレス性体温上昇」と呼びます。
ストレスで熱が出ている人は、自律神経が乱れている可能性が高いでしょう
自律神経が乱れると、日中に活発に働いて身体を緊張・興奮状態にする交感神経と、夕方以降に優位になって身体を休息させる副交感神経の切り替えができなくなります。
ストレスがかかると交感神経が優位になり、体内の熱産生を増加させます。
それとともに、皮膚の血管を収縮させて血流を低下させ、体外へ熱が逃げるのを抑制。
体の中心部分の体温(深部体温)を上昇させます(※3)。
これが、ストレスによる体温上昇です。
深部体温の上昇は、睡眠にも大きな影響を与えます。
人は深部体温が下がっていく過程で眠気を催しますが、交感神経が優位な状態では深部体温が低下しません。
そのため、寝つきが悪くなったり、浅い眠りになったりして睡眠の質が低下するのです。
睡眠の質が低下すると、通常は眠っている間に副交感神経の働きによって促される腸の蠕動運動が鈍くなり、便秘しやすくなります。
便秘になると腸内に悪玉菌が増殖し、腸内環境が悪化。便秘による腹部の不快感やイライラ感が増し、ストレスフルな状態に。
すると、免疫力が低下して病気にかかりやすくなる…という負のサイクルが生まれてしまうのです。
ストレスによる自律神経の乱れは、身体を健康的な状態に保つために必要なホルモンの生成にも大きな影響を与えます。
便秘改善に欠かせないのが、良質な眠りや規則正しい生活です。
眠りの質を左右する“睡眠ホルモン”ことメラトニンは、日中に生成される“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンから作られ、その90%が腸内に存在すると言われています。
腸内のセロトニンが脳へ直接届く訳ではありません。
しかし、腸内細菌は脳内のセロトニンを増やすために必要な物質を送っているため、便秘によって腸内環境が悪化すると腸内細菌が減少し、脳内のセロトニン量も減ってメラトニンの生成量が少なくなります。
セロトニンには自律神経を整える作用もあるため、腸内環境の悪化によって、ますます自律神経が乱れやすくなるといった悪循環に陥ってしまうのです。
今回は、便秘と発熱の関係についてお伝えしました。
自律神経の乱れは、腸内環境の悪化や便秘、不眠などさまざまな悪影響を及ぼします。
自律神経を整えるには、朝起きてすぐに太陽の光を浴びて体内時計をリセットする、規則正しい生活を送る、適度な運動を行うなど、ちょっとした生活習慣を取り入れるだけで効果が期待できます。
便秘をはじめとした体の不調を感じている人は、自律神経の乱れを直す生活を意識してみませんか。
ただし、38度以上の高熱に吐き気や激しい腹痛を伴う場合は、すぐに医療機関での処置や治療が必要な疾患にかかっている恐れもあります。
そのような症状が起こった時は、すぐに病院へ相談しましょう。
※1:島田敏實, and 竹越忠美. "老齢者の便秘と体温の関係について." 日本老年医学会雑誌 29.12 (1992): 945-952.
※2:小村智美, and 西川禎一. "プロバイオティクスの免疫調節作用." 日本食品微生物学会雑誌 30.1 (2013): 1-14.
※3:中村和弘. "ストレス性体温上昇の神経機序—感染性発熱との比較から—." 心身医学 60.3 (2020): 203-209.
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